川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンター(iCONM、川崎市)の内田智士主幹研究員らは、メッセンジャーRNA(mRNA)を使うワクチンの副作用を抑える技術を開発した。mRNAを運ぶ微粒子を使わずに皮膚の免疫細胞に直接届ける。腕の痛みや発熱などの副作用の回避につながる。
mRNAワクチンは新型コロナウイルス感染症向けに普及したが、接種後に腕の痛みや発熱などの副作用が出ることがある。ワクチンの成分で体内で壊れやすいmRNAを包んで届ける脂質でできた微粒子が原因とされる。
研究チームはmRNAを微粒子で包まずにそのまま体内に届ける技術を開発した。ごく微量の火薬を爆発させた力で体内に薬などを送り込む針のない注射器を利用する。
サルやマウスの実験では皮膚から瞬時に注入することで、mRNAが分解される前に免疫細胞に直接届いた。投与後は従来のワクチンと比べ、炎症の度合いを示す数値が低く「ほとんど副作用は起きていないとみられる」(内田氏)。動物の体内で病原体に対する抗体が作られ、ワクチンとして機能すると確認した。
今後は内田氏が参画するスタートアップのクラフトンバイオテクノロジー(名古屋市)などと連携して実用化を目指す。ワクチン開発の推進を目指して政府が設立した先進的研究開発戦略センター(SCARDA)の支援も受け、2026年内に臨床試験(治験)を始めたい考えだ。
東京都医学総合研究所や東京医科歯科大学などとの共同研究の成果で、米科学誌「モレキュラー・セラピー」に掲載された。
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