中国電力は、12月を予定する島根原発2号機(松江市鹿島町片句)の再稼働に向け、準備を進めている。今月、重大事故を想定した訓練の様子を報道機関に公開。原発敷地内では安全対策工事がほぼ完了していた。

 同町佐陀本郷の原子力運転シミュレータ訓練棟では、2号機の運転訓練が19日に公開された。訓練棟は2号機と3号機(建設中)の中央制御室を模した施設。この日は、2号機で重大トラブルが発生したという想定で、ベテラン、若手の運転員5人が参加した。

 訓練では、発電所内の電源が喪失し、原子炉内の水位低下で原子炉が自動停止、外部電源も失われるという事態を想定。運転員らは、非常用電源の起動や原子炉への注水などの操作や手順を確認した。

 1号機は2010年3月に運転を停止し、再稼働することなく廃炉が決まった。2号機は東日本大震災後の12年1月に定期検査で停止して以来、稼働していない。中電によると、1、2号機の運転員64人のうち39人が運転未経験者だという。それでも島根原発発電部の田中克敏課長は「若手運転員は6割程度いるが、運転に必要な知識・技能は身につけている」とし、ベテランを含めたチームで安全に運転できると話した。

津波、地震対策は

 原発敷地内の海側には分厚いコンクリートの壁がそそり立つ。全長1.5キロ、高さ15メートル。中電が津波対策として設けた防波壁だ。最大11.9メートルの津波を想定し、既存の壁をかさあげしたり、新たに備えたりした。「フクシマの教訓は、想定外の事は起きる、ということ。二重三重の対策をおこなう必要がある」と島根原子力本部の広報担当者は説明する。

 安全対策工事は、2011年の東京電力福島第一原発事故直後から始まった。新規制基準にもとづき、地震や津波の想定を厳しくするとともに、原子炉内の核燃料(炉心)の損傷など重大事故の発生を想定した対策を進めてきた。

 地震対策では、島根原発の約2キロ南側を東西に走る「宍道断層」の長さの評価を22キロから39キロに見直した。それに伴い、耐震設計の元となる基準地震動(地震の最大の揺れ)を600ガルから820ガルに引き上げ、耐震工事を実施。原子炉を冷やすための代替手段や原子炉の炉心が溶けた場合の対策も施した。

 津波が防波壁を乗り越えた場合にも備え、建物内外に浸水を防ぐ100枚以上の水密扉を設置した。電源も多重化。原子炉建屋内の非常用発電機が使えなくなっても電源を確保できるよう、新たに敷地内に大型ガスタービン発電機を設けたほか、高圧発電機車14台を配備した。

 安全対策工事は10月中には完了し、原子炉に核燃料を入れる「燃料装荷」を始める計画だ。

 ただ、1月の能登半島地震では、北陸電力の想定を超える活断層の連動があったり、志賀原発の敷地地盤が3~4メートル隆起したりした。これについて中電は「志賀原発で安全上問題となる被害は確認されていない。現在進めている安全対策によって島根原発の安全は確保できると考えている」としている。(堀田浩一)

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