仏アリアンスペースのイズラエルCEO(中央)らがロケットの展望を語った(4日、東京都中央区)

商用衛星打ち上げ大手の仏アリアンスペースは4日、都内で記者会見を開き、7月に投入した欧州の新型大型ロケット「アリアン6」を2027年に年間10回打ち上げる戦略を示した。前身機からほぼ2倍の水準で、全体の約6割を商用打ち上げに充てる。打ち上げ需要の獲得で日本の大型ロケット「H3」と競う。

ステファン・イズラエル最高経営責任者(CEO)は「アリアン6は打ち上げ市場に完全に適合した打ち上げ機だ」と話した。アリアン6は、推進力を得るために付ける補助ロケットの個数を変えやすく、衛星を搭載する先端部は多様な種類をそろえる。様々な衛星の打ち上げ需要を捕捉できると見込む。

「アリアン」シリーズは欧州宇宙機関(ESA)が開発し、アリアンスペースは打ち上げ業務を担う。フランス領ギアナの宇宙センターから発射される。1996年から2023年に運用したアリアン5は、年間5〜6回の打ち上げにとどまっていた。アリアン6では現状で30件の受注を得ており、うち商用が21件を占める。18件が米アマゾン・ドット・コムが構想する通信サービス「プロジェクト・カイパー」向けの衛星だ。

7月の初号機の打ち上げでは一部の装置で不具合が生じたが、原因を突き止めて24年内に計画する2号機の打ち上げで対策を講じる。仏軍の大型衛星を宇宙空間に投入し、本格的な運用段階に入る計画だ。

7月に打ち上げられた「アリアン6」初号機=ESA 提供

アリアンは日本を有望市場と位置づける。従来はスカパーJSATの衛星の受注や、ロケットの打ち上げバックアップ体制で三菱重工業と連携してきた。今後は宇宙ごみ対策を目指すBULL(宇都宮市)の装置をアリアン6に載せる検討に乗り出すなど、取り組みを広げる。

ロケットの打ち上げ需要は、複数の小型衛星を一体で運用する「衛星コンステレーション」の普及で世界的に高まっている。23年の打ち上げ数は212回で、前年と比べ2割増えた。

これを商機とみて、新型ロケットの投入が世界で相次ぐ。日本では宇宙航空研究開発機構(JAXA)のH3が2月に2号機で初めての打ち上げに、7月に3号機で国の大型衛星の軌道投入に成功した。米国では1月、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)のロケット「バルカン」が打ち上げに成功した。

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