イタリア北部トリノで開かれていた主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合は30日、二酸化炭素(CO2)排出削減対策が講じられていない石炭火力発電について、2030年代前半に段階的に廃止することを盛り込んだ共同声明を採択した。
G7の共同声明に石炭火力の廃止期限が明記されるのは初めて。産業革命前からの世界の気温上昇を1・5度に抑えるという世界共通目標に沿っていることを条件に、期限に解釈の幅をもたせる表現も併記した。
会合は28日(日本時間29日)に開幕。日本からは伊藤信太郎環境相、斎藤健経済産業相らが出席した。
共同声明では、CO2排出量の多い石炭火力について、30年代前半に段階的に廃止、もしくは「1・5度目標を実現できるスケジュールで」廃止するとした。ただし、1・5度上昇に抑えられるよう「稼働をできる限り減らす」と、安易に使い続けることにクギを刺すような文言が入った。「地球規模で石炭火力の新規承認にできるだけ早く終止符を打つ」として、世界各国と協力を推進することも盛り込んだ。
近年のG7環境相会合では石炭火力廃止の期限に合意できるかが焦点となってきた。ドイツが議長国を務めた22年の会合で初めて、石炭火力の段階的廃止に合意したものの、期限は入らなかった。日本が議長国となった昨年の会合でも、欧州勢は年限を盛り込むよう主張。天然ガスを含むすべての化石燃料の段階的廃止に初めて合意したものの、石炭火力の廃止時期は日本の反対などで見送られた。
日本は原発の再稼働が遅れ、再生可能エネルギーの適地も限られている。現行のエネルギー基本計画では30年度時点で総発電量の19%を石炭火力でまかなう計画だ。共同声明は廃止時期に幅を持たせていることなどから、経産省幹部は「これまでの方針に変更はない」とするが、気候変動対策の面で国際社会から厳しい視線が注がれることは避けられなさそうだ。
今回の共同声明では、昨年の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)での合意を受けた方針も盛り込んだ。
COP28では電力などのエネルギー部門で、化石燃料からの脱却を加速させることに合意。再生エネの設備容量(発電能力)を30年までに世界全体で3倍にする目標をかかげた。
共同声明はこうした決定を受け、改めて化石燃料からの脱却の必要性を強調。再生エネ拡大を後押しするため、蓄電池など電力を貯蔵する能力を30年までに22年の6倍以上に相当する15億キロワットに拡大させるとした。【山口智、高田奈実、ニューヨーク八田浩輔】
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