大富豪が所有するプライベートジェットが気候変動に及ぼす影響が世界で問題視されている。国際NGOオックスファムは10月、こうした大富豪が、世界の平均的な人の300年分、貧困層の2000年以上分のCO2を出しているという調査結果を公表した。
同NGOは、世界で最も裕福な50人のうち、プライベートジェットの保有が確認できた23人の2023年の利用状況を調べた。
すると、平均で年間184回、425時間を飛行していた。これは地球10周分に相当するという。CO2の排出量は、年2074トンに上った。
世界で2番目の富豪イーロン・マスク氏は少なくとも2機を保有し年5497トン、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏は2機を保有し、年2908トンのCO2を、それぞれ排出した。報告書はベゾス氏を「米国のアマゾン従業員がこの量を排出するには207年かかる」と皮肉った。
同NGOの調査チームは「近年、プライベートジェットの保有を匿名化したり、飛行がレーダーに引っかからないようにしたりしており、調査が困難になってきている」と問題視する。
スウェーデンなどの研究チームが11月に英科学誌ネイチャー姉妹誌で発表した論文では、大富豪がプライベートジェットで世界的なイベントに集まることが、CO2の排出を押し上げている現状も浮かんだ。
チームは23年の世界的なイベントで使われた、個人保有やレンタルのプライベートジェットのCO2排出量を調べた。
その結果、1月にスイスであった世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が最も多い7500トン、次いで5月の仏カンヌ国際映画祭が4800トンだった。11~12月にアラブ首長国連邦(UAE)であった、地球温暖化対策の国際ルールを話し合う国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)も、3800トンを排出していた。
チームは19~23年にかけて、こうした飛行が46%増加していることを指摘。「気候への影響が拡大するため、規制が必要だ」と強調している。
オックスファムの報告書はこちら、スウェーデンなどの研究チームの論文はこちらで見られる。【渡辺諒】
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