中国電力島根原発(松江市)が立地する島根県は20日、防災対策など原発関連業務に従事する県と、原発から半径30キロ圏内の県内自治体職員の人件費を中国電が負担することでおおむね合意したと発表した。負担額は年5億円程度。電力会社が、職員人件費を負担する仕組みは異例という。中国電は12月7日、島根2号機の再稼働を予定している。
中国電が職員の人件費を負担するのは、県と松江、出雲、安来、雲南の4市。県が約5億円を受け取り、うち約1・6億円を4市に交付する。
原発関連業務にあたる職員の人件費について、県は「原発の業務は政府の政策、法律に基づくもの」として国が全額負担するよう求めてきたが、実現していない。
一方、県は原発関連経費として道路整備や人件費などで年70億円程度を負担。中国電からは核燃料税を徴収し、原発関連経費に充てているが、2023年度は7・5億円、20~24年度の5年間で計42億円程度という。
核燃料税の規定は5年ごとに更新する。25~29年度分を策定するにあたって、県は中国電に職員の人件費を負担するよう要望し、中国電が協力することになった。負担期間は「国が自治体職員の人件費の財政措置を行うまで」としている。
丸山達也知事は20日、報道陣に「政府が財政措置することが本筋。政府に強く求めてきたがなしのつぶて。だからといって県民が甘受しないといけないものでもない」と主張。「(原発があるという)原因者負担として中国電に協力をお願いし、ご理解いただいた」と説明した。
島根原発の30キロ圏内には鳥取県境港市と米子市も含まれているが、中国電は22年に鳥取県と「原子力防災に関する財源協力協定」を締結。島根県に先行して、原発関連業務を担う県と2市の職員の人件費を年1・6億円負担している。
電気事業連合会(東京)によると、電力会社が原発関連業務の自治体職員の人件費を負担する仕組みは「中国電以外は把握していない」という。(垣花昌弘)
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