京都大学の高橋義朗教授と大学院生の中村勇真氏らは、原子を使う方式の量子コンピューターの計算精度を高める手法を開発した。2種類の原子を使い分け、計算中に発生するエラーを見つける。高性能な量子コンピューターの開発につながる可能性がある。

量子コンピューターは量子の曖昧な状態を計算に利用する次世代計算機だ。従来のコンピューターが「0」と「1」の状態を計算に使うのに対し、量子コンピューターでは「0でもあり1でもある」という状態の量子ビットを利用する。従来の手法では計算に時間がかかる複雑な問題を、短時間で解けるようになると期待されている。

一方、量子コンピューターは不安定な状態を計算に使うため、計算途中にエラーが多く発生する。高性能なコンピューターとして利用するにはエラーを検知し、訂正しながら計算をしていく必要がある。

量子コンピューターは量子ビットの作り方によって様々な方式が提案されている。極低温で電気抵抗がゼロになる超電導物質で量子ビットを作る方式の研究がこれまで進んできた。

研究グループは量子ビットに原子を使う「中性原子方式」に有効な技術を開発した。中性原子方式は大型の冷却装置が不要で、性能を高めやすい。一方、計算に時間がかかるという欠点がある。近年、精度を高める技術が飛躍的に向上している。

研究グループはイッテルビウムという原子を使って計算精度を高める手法を開発した。イッテルビウムの2種類の同位体を使う。片方を計算に利用し、もう片方をエラーの検出に使う。

従来の手法ではエラーの検出時に、計算に使う原子に影響が出てエラーの原因となっていた。今回の手法では原子を使い分けたため、計算に使う原子の量子状態への影響を抑え、実用レベルに近い99.92%の精度で結果の読み出しができた。今後は実際の計算ができるように改良し、今回の手法を基盤とした量子コンピューターの実機の開発を目指すという。

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