青森県が検討している「再エネ新税」やゾーニングに対し、賛否両論が出ている。多様な意見がある中、自治体はどう取り組むべきか。鳥取県知事、総務相を歴任し、地方自治に詳しい片山善博・大正大学特任教授に聞いた。

 ――青森県が陸上風力、太陽光発電事業者への新税を検討しています。

 「事業者とどの程度話し合いをして、納得感を得られているのでしょうか。税は納税者の代表である議会の同意が必要ですが、再エネ新税のような法定外目的税は徴収される対象が限られます。取られる側の納得が重要で、県は事業者の理解と納得を得る努力をする必要があります」

 ――事業者は既存事業への課税に反発を強めています。

 「静岡県熱海市の『別荘税』は導入時、すでに立っていた別荘も対象にしました。既存のものへの新税が絶対ダメということではありません。ポイントは負担の水準です。風力や太陽光を始めたのに、税が重荷となって事業をできなくなるようでは困ります。平穏無事に事業を継続できる範囲内でないといけません」

 ――青森県は12月中旬に最終案を示し、年度内の関連条例制定をめざしています。

 「案を出した後も事業者と話し合い、修正も含めて柔軟に対応するなど丁寧に進めていく必要があります。行政では案を出して、それが決定版のように扱われることが往々にしてありますが、そういうことでは乱暴です。事業者に県議会で発言機会を与えるのも一つの手です」

 ――法定外目的税は総務相の同意が必要です。

 「負担が著しく重くならない、国の経済政策と整合性がとれるなどの条件があり、事業者からある程度の納得が得られているかも加味します。現実的には妥協点を探ることになるでしょう」

 ――青森県は再エネを禁止したり、促進したりする区域分け「ゾーニング」も検討しています。

 「太陽光や陸上風力発電では環境破壊や土壌流出による災害も心配です。ゾーニングはやってしかるべきだと思います。地域によって事情は違ってくるので、国の規制を補完したり、規制を新たに設けたりするのは自治体の役割です」

 ――再エネは地域への利益還元が少ないとの指摘があります。

 「青森にどれだけ風力でお金が落ちているのでしょうか。地元への恩恵は少なく、発電事業者や電力消費者がその分を享受している構図です。事業者にある程度負担してもらい、その分は都市のユーザーに転嫁するべきだと、私が知事なら言うでしょうね」

再エネ新税の方向性(青森県、抜粋)

・(使途)環境保全、再エネ導入促進等に向けた諸施策に活用

・(対象)事業規模に応じて線引き

・(負担水準)再エネの普及を妨げない水準

・ゾーニングの区分ごとに税率に差

・(既存事業)事業者に予見可能性はなく、権利利益に配慮

かたやま・よしひろ 1951年、岡山市生まれ。東京大学法学部卒。旧自治省固定資産税課長などを経て、99年から鳥取県知事を2期。2010年、菅直人内閣で総務相。22年から大正大学地域創生学部公共政策学科特任教授。

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