「インタビュー ここから」見逃し配信

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日本のテレビを愛し テレビに愛され…

インタビューの舞台は、東京にあるデーブさんの事務所。壁沿いには、15台のモニターがずらりと並んでいます。

(山田)
ここがデーブさんの事務所なんですね。モニターがたくさんありますね。
(デーブさん)
ふだんは各局の放送が映ってますけど、きょうは大人の都合で消しています。
(山田)
(苦笑)…でも、こんなに、いっぺんに見るんですか?
(デーブさん)
やっぱり情報番組が特に好きで。朝から自宅でも5台の液晶テレビつけて、起きている時間、全部チェックしてますから。いちばん日本のテレビ見てるの自分ですよ、間違いない。
(山田)
デーブさん自身も日本のテレビに長年出演していますが、例えばワイドショーでの発言っていうのは、昔と変わってきていますか?結構ズバズバ言う印象が強いんですけれども。
(デーブさん)
まあ、炎上しないように、一応。前置きはするんです。
すべての人がこうではないとか、何か前置きをなるべくしますけれども。
(山田)
どういうことですか?
(デーブさん)
「政治家、ダメだよ、みんな」って誰でも言えるもん。でも、中にはもうめちゃくちゃに“やり手”いますよ、優秀で頭よくて、いっぱいいますよ、若手含めて。
(山田)
政治家全体のことを言っているわけではないということを、ひと言つけるようにしているってことですか?
(デーブさん)
そうです。コメントって迎合主義になりがちなんですよ。でも、人が傷つかないような言い方はしますね。だって見てる方いっぱいいるから、分からないんですよ。それは気を付けますけどね。何かを恐れてるわけじゃなくて、フェアに言うとか、電波ですので、誰でも見られるわけですから。無責任に調子に乗ったりはしないつもりでいるんですけどね。

自分だからできる発信は何か…転機は、東日本大震災

常に受け手のことを考えてコトバを発するデーブさん。日本で生活する1人として何が発信できるのか…見つめ直すきっかけとなった出来事がありました。それは、東日本大震災です。
当初は、SNSで続けてきたジョークの投稿も自粛したほうがいいのではないかと考えましたが、ユーモアを届けることこそ自分の役割だと感じ、発信を続けました。

X(旧:Twitterより)

X(旧:Twitterより)

(デーブさん)
みんな非常に慎重になって、バラエティーもなかったりして。アメリカの9.11でも同じでした。じゃあ、いつから笑える番組があっていいのかどうか大議論になって、日本もそうだったんですよね。
その時、じゃあ、なんかほっこりするような、ちょっとほっとするような、ダジャレではあるんですけれども。あるいは、メッセージでも、ちょっと楽しくしてもいいかなと思って、もしかしたらギリギリの線だったかもしれないけれども投稿してみたんです。なんか、それがね、受け入れていただいたんですよ。

岩手県陸前高田市にて(2011年)

(デーブさん)
被災地に行ったときに、ファストフードの店行ったんですけども、そこで若い人、子ども、いっぱい笑ったりしてるんですよ。悲惨ですよ、状況は。もう少し1キロぐらい進んだら、ほんとに破壊、破損されてるものばかりだったんですけど。
子どもたちとか若い人、10代とか、普通にしたいんですよ。普通にしたいんですよ。それ見たときに、「かわいそうですね」じゃなくて、どうにかして前向きになりたいと思ってるんだと、それちょっと見たんです、自分の目で。
(山田)
現地まで行って、見たからこそ?
(デーブさん)
明るく、前向いてちょっと励ますっていう、重たい感じはしない。永遠に「大変ですね」っていうのを求めているとは限らないんですよ、個人差ありますけど、それがいちばん実感したんですよ。

いまも毎年3月11日に、デーブさんなりのユーモアを交え、思いを届けています。

X(旧:Twitterより)2024年3月11日の投稿

(山田)
「僕を笑い者にしてください」っていう、この一文に、デーブさんの思いが伝わります。少しでもユーモアを届けたいっていう思いがあったんですね。
(デーブさん)
自然に笑いたいんじゃないですか。ほんとはね。
(山田)
この投稿にはオチがなかった。「オチはありません」っていう、こういう投稿もあるんですね。
(デーブさん)
大阪で、オチがなくてすいませんって言うんですよ。決まりぜりふで、真面目な話をしたあとに。それ好きで。謝るんですよ?オチがなくて。
きょうもあまりオチがないんです。

デーブは何しに日本へ?念願だった留学

アメリカ・シカゴで生まれ育ったデーブさん。
日本好きの始まりは、小学生の時にまでさかのぼります。日本人の同級生の影響で、日本のテレビや文化に没頭し、家族も心配するほど熱中。憧れの日本を肌で感じたいと、高校卒業後、上智大学へ1年間留学しました。

(山田)
デーブさんはどんな学生でした?
(デーブさん)
日本に来られただけで、もう毎日、興奮状態だったんですけれども。どういう分野とか関係なく、ただ日本に来たいだけですから、ほんとのこと言うとですね。当時は、いわゆる日本オタクみたいな人、まだそんなに多くなかったですよ。漫画ばっかり読んでたから、アメリカで。漫画と日本の映画、あと紅白、ああいったカルチャーのものにハマったんですよ。だから日本に行けば、「おそ松くん」がいるかなあと思ったらいないんですよ。おでんも小さいし。

上智大学の教室にて

(デーブさん)
いまですと、日本に来る前に、学生に限らないで、インバウンドの人も、みんな動画など見て、ネット見て、予備知識があるんですよ。何しに来てんのかなと思う、確認しているだけですよ、もう知ってるから。ところが当時はそんなものありませんので、自分自身の経験ですよ。写真だってね、撮らないですよ。なかなかカメラ持ち歩きません、いまみたいに。だからある意味では、非常に貴重な自分だけのための経験だなという感じで懐かしく思うんです。

もともと放送の仕事に就きたいと考えていたデーブさん。留学からの帰国後は、様々な仕事を経て、アメリカのテレビ局のプロデューサーになりました。仕事に打ち込みたいと、これ以上日本に没頭しないよう、あえて遠ざけていたそうです。

アメリカのテレビ局のプロデューサー時代

(デーブさん)
わざと日本のものを避けたんです。ロサンゼルスのリトルトーキョー行かないし、行ったら日本の商店もあるし、また戻っちゃうから。
(山田)
ハマってしまうかもしれない。
(デーブさん)
ハマっちゃう。テレビの仕事やりたくて行ったわけですから。徐々に向こうのテレビ番組についたんですけど、うまくいってるなと思ったころに、日本のテレビが映ってたんですよ。「おお、やっぱおもしろい」と思って、また脱線しちゃうんですよ。今度、我慢できなくて、本屋さんへ行って、いろんなものを、週刊誌買ったりして。結局日本の土台だった上智含めて、忘れられなくて。
そうしていたら、いつの間にか突然、本当に偶然ですけど、東京に行けるテレビ番組の誘いがあったんですよ。それで来たわけですよ。それがなかったら、たぶん、日本のことはあくまでも趣味として残して、たぶん来なかったんですよ。だから何でも、なんですか、運命ですよね、タイミングとか。

仕事で再び来日してから40年。
当初は「外国人目線で日本を見ていた」デーブさんも、いまでは「日本でみんなと一緒に生活していて、日本人の感覚もある」と言います。

デーブ・スペクターが届けるコトバの信念

近年は、テレビ出演の軸足を報道・情報番組のコメンテーターにおくデーブさん。
視聴者を傷つけないことを心がける一方で、鋭くコメントすることとのバランスも大事だと考えています。

(デーブさん)
多様性っていろいろあるんですけど、あまり気にすると、迎合主義になってしらじらしくなるので、無難主義になっておもしろくないですよ。見てる層が広いので、全員が納得するわけもないし。だから、過度に遠慮がちになったり、消極的になる必要はないんじゃないかなと思うんですよ。当たり障りもないこと言うならば、別に自分じゃなくてもいいじゃないですか。
空気読めないのは、逆に強みなんですよね。空気読んだら、気を付けておもしろいことを言わなくなっちゃうもん。
(山田)
いわゆる、忖度(そんたく)っていうことですかね?
(デーブさん)
そうそう…。忖度はもう、日本ですよ、忖度。
“洗濯”もありますけど(笑)
忖度だらけですよ、日本は、よくも悪くも。いいときもありますよ。全部悪いとは思わない。言わない気配りとか、全部悪いとは思いませんけどね。

(山田)
SNSでも結構ギリギリのところを攻めているような気もしますが。
(デーブさん)
なるべく当たり前すぎるダジャレとかのせないですよ。「これだったら誰でも思いつくな」と思うと、もうのせない。自分に対して厳しい基準、置いてありますね。人の時間をむだに使いたくないから。
でも、よく街歩いてると「つまらないこと言って」って言われる(笑)
「おもしろいこと言って」ってすごいプレッシャーですけど、つまらないこと言えるからありがたいですけどね。

(山田)
さて、ここまで話をうかがってきましたが…
(デーブさん)
あっ、まとめに入りました?
(山田)
さすが放送プロデューサー…(笑)
これから、視聴者にとって、どんな存在であり続けたいですか?
(デーブさん)
そうですね、見飽きない、「何かおもしろいこと言ってくれるかな」って、ちょっと期待感があればいいなと思いますよね。友達ですよ、みんな視聴者。だってずっと長年のつきあいだから。茶の間に入ってますから。
(山田)
デーブさんを知らない人いないですからね。
(デーブさん)
うん、赤ちゃんはあまり知らないけど。
(山田)
さすがに(笑)
(デーブさん)
生き残っている快感もあるんですよ。自分がまだ続けているっていううれしさとか、達成感もあるんですよ。自負もあるんですよね。

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