「24時間、研究のことを考えている」。優れた女性科学者に与えられる「猿橋賞」の受賞会見で顔をほころばせた。物質を形作る目に見えない微小な粒子の世界と日常を結ぶ物理学の分野を数学で読み解いた。
21年に数理物理学の分野で権威のあるアンリ・ポアンカレ賞を日本人で2人目に受賞。22年には4年に1回の国際数学者会議で招待講演者に選ばれるなど、世界で名がとどろく。
23年12月に数学研究の拠点の京都大学数理解析研究所の教授に就任した。「研究時間がたっぷりある。日本の数学にとって宝のような場所だ」と話す。大学の外でも研究に没頭する。「数学者の仕事はおすすめ。人気のパン店に並んでいるときも頭の中で研究の手掛かりを探している」。
難解な研究内容は理解されにくい。会見で「小学生が相手ならどう説明するか」と問われたが、譲歩せずに専門用語を駆使して語った。一流研究者のこだわりだろう。
物理学を学んだ修士課程の時代に企業への就職も考えた。保険業界などをのぞいたが「研究以外のことにエネルギーが湧かなかった。どこかで頑張るなら、研究で」と思い直した。たまの息抜きは家族とのハイキングだ。
(土屋丈太)
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