サツキバー氏(写真㊨=ロイター)はオープンAIを離れることになった

【シリコンバレー=山田遼太郎】米新興企業オープンAIは14日、チーフサイエンティストで共同創業者でもあるイリヤ・サツキバー氏が退社すると発表した。同氏は人工知能(AI)の有力な研究者だ。同社が生成AI分野をけん引する企業になる上で重要な役割を担った。中核人材の流出は今後の研究に痛手となる可能性がある。

2023年11月に起きたサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)の解任騒動では、当時のオープンAIの理事(企業の取締役に相当)としてアルトマン氏の解任に同調した。その後はオープンAIの活動への関与を減らしているとの見方が出ていた。騒動の直後、経営体制の刷新に伴い理事を外れた。

サツキバー氏はカナダ・トロント大で「深層学習の父」として知られるジェフリー・ヒントン名誉教授から学んだ一人だ。同氏が所属した米グーグルでもAI研究に携わった。15年にオープンAIの設立に参画した。人間の知能をしのぐ汎用人工知能(AGI)の実現を目指す同社で研究トップを務めてきた。

アルトマン氏はX(旧ツイッター)の投稿で「現在のオープンAIは彼なしではありえなかった」と述べ、サツキバー氏に謝意を示した。サツキバー氏は今後について「個人的に意義深いプロジェクトに取り組む」とXで説明した。「オープンAIが安全で有益なAGIを構築すると確信している」とも述べた。

アルトマン氏は23年11月のCEO復帰後、サツキバー氏が同社で働き続けることを望むとしていた。オープンAIはサツキバー氏を筆頭とした優れた研究者にイーロン・マスク氏らや企業が開発資金を拠出することで始動した経緯がある。AI分野で各社が人材の獲得を競うなか、お家騒動を経てオープンAIは有力な研究者を失った。

オープンAIは非営利団体の理事会が営利企業を統治する特殊な構造を持つ。23年11月、コミュニケーションの不備などを理由に当時の社外理事が中心となってアルトマン氏を解任した。サツキバー氏はこれに賛成票を投じた後、一転して「深く後悔している」と表明しアルトマン氏の復帰を支持した。

オープンAIは14日、サツキバー氏の後任として17年から同社に勤務するヤクブ・パチョッキ氏がチーフサイエンティストに就くと発表した。

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