経済産業省本館=東京都千代田区霞が関1で2019年2月2日、本橋和夫撮影

 経済産業省は15日、国のエネルギー政策の中長期の方向性を示す「エネルギー基本計画(エネ基)」の改定に向けた議論を始めた。2024年度内に改定し、40年度の電源構成などを示す。脱炭素化の動きが加速する中、岸田文雄政権が活用する方針の原子力発電の位置付けや、石炭火力発電の扱いなどが焦点だ。

 「日本はエネルギー政策における戦後最大の難所にある」。同日開いた総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の分科会の冒頭、斎藤健経産相はウクライナ危機などを背景にしたエネルギー情勢の不安定化に危機感を示し、脱炭素エネルギーの安定供給の必要性を強調した。出席した委員からは「産業政策とセットで考えるべきだ」「国が責任を持って道筋を示す必要がある」などの意見が出た。

原発、再稼働のハードル高く

 エネ基は3年をめどに改定しており、21年に閣議決定した現行計画で示した30年度の電源構成は、再生可能エネルギー36~38%▽原発20~22%▽天然ガス20%▽石炭19%――などとなっている。

 原発は、11年の東京電力福島第1原発事故以降のエネ基で「可能な限り依存度を低減する」としてきた。しかし政府は22年、50年までの二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量実質ゼロに向け、原発回帰に転じた。今後は次期エネ基に、原発の再稼働の加速や新設、リプレース(建て替え)をどの程度織り込むかを検討する。

 ただ、安全対策の遅れや地元同意の難しさなど再稼働のハードルも高く、現実的な電源と見なせるか不透明感は強い。

石炭火力発電も論点

 温室効果ガスの排出量が多い石炭火力発電の依存度をどう減らすかも大きな議題だ。4月にイタリアで開かれた主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合では、CO2排出削減対策が講じられていない石炭火力発電を30年代前半に段階的に廃止することを盛り込んだ共同声明が採択された。

 廃止時期に幅があることなどから、エネルギー政策への影響は「大きくない」(経産省幹部)との見方もあるが、石炭火力は発電電力量の約3割を占めるだけに論点だ。

 現行計画で主力電源化を徹底する方針が記された再生エネも、適地を確保しながら導入拡大できるかが課題だ。

 電力需要の見通しにも注目が集まる。電力需要はこれまで、節電など省エネルギーの普及や人口減によって減少する想定だったが、電力を大量消費するデータセンターや半導体工場の増設に伴い、長期的な電力需要が増大する可能性がある。

 政府の脱炭素戦略の司令塔となる「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」も、エネ基と並行して議論を進め、40年までの脱炭素電源の拡充策などを盛り込む「GX2040ビジョン」を年内に策定する。【高田奈実】

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