世界自然遺産・知床の携帯電話基地局建設について、山内浩彰・北海道斜里町長は23日、朝日新聞の取材に対し、知床岬での計画は「自然・景観の保護との両立」を厳守して進めるよう国に強く要望することを明らかにした。4月の会議で電源となる太陽光パネル設備の規模の大きさに違和感を覚えたという。

 知床岬に建設される太陽光パネル(264枚)の敷地はサッカーコート並みの約7千平方メートル。昨年に続き、4月26日に斜里町で開かれた第2回知床半島地域通信基盤強化連携推進会議の記者会見で敷地面積が明らかになった。会議は総務省主導で関係省庁や道、地元2町、通信事業4社などが出席したが、配布資料には電源設備の図面も敷地面積も示されていなかった。

 電源設備のイメージ図は内部資料として昨秋、一部関係機関には示されていたが、山内町長は記憶がなく、「記者会見で具体的な数字(面積)を知った。サッカーコート1面って、そこまで発電量が必要なのかと一瞬思った」と語った。

 会議後、道内外の自然保護団体が国や地元2町などに計画反対や再考を求める意見書を相次ぎ提出。しれとこ100平方メートル運動の全国3支部は運動の本部長を務める斜里町長に、町が国に再検討を働きかけるよう求める要請書を送った。

 斜里町は2022年4月の小型船沈没事故を受け、同年12月、環境省と総務省に知床半島の通信環境整備の促進を求める要望書を提出した。ただ、この中では「世界自然遺産知床の自然・景観の保護との両立」を図りながら進めることを絶対条件としていた。

 山内町長は「いまは知床の自然と景観保護との両立には当てはまらない状況にあると判断をせざるを得ない」と地元や自然保護団体の懸念を払拭(ふっしょく)するよう国に求めることを決めた。

 町は羅臼町と調整し、近く環境省と総務省に文書か、直接出向いて申し入れるという。(奈良山雅俊)

 山内浩彰・斜里町長の話 太陽光パネルの敷地面積が7千平方メートルと聞き、一瞬、そんなに大きいのかと思った。その後、計算してみた。パネル264枚の面積は計約380平方メートル。敷地はこの2倍として大きく見積もっても1千平方メートルくらい。なぜこれほど広くなるのか。

 専門家ではないのでよくは分からないが、確かに太陽光パネルは見栄えがよくない。知床国立公園の管理計画と矛盾するとの指摘もある。ただ、町として譲れないのは「自然と景観保護との両立」だ。そのためには1社分の66枚を4社が共同で使うとか、太陽光以外の電源を考えるとか、その結果、規模縮小があるかもしれない。

 いずれにしても国には地元や知床を応援してくれる自然保護団体などに計画を理解してもらえるようしっかり説明してもらいたい。

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