新型『MINIクーパー』を一足早く走らせる機会を得た。場所はスペインのバルセロナ。ここで3週間にわたり世界から250人以上のメディア関係者を集め国際試乗会が行われた。
MINI クーパー SE用意されたモデルは「クーパーSE」。バッテリーEV(BEV)である。リチウムイオン電池でモーターを動かすパワーは、最高出力160kW/218ps、最大トルク330Nmとなる。クーパーSEにはその下に「クーパーE」があり、若干デチューンされる。そちらは最高出135kW/184ps、最大トルク290Nmという数値だ。
もちろん新型MINIにはガソリンエンジン車もある。が、今回国際試乗会に用意されたのはクーパーSE一択。その意味ではこちらが自信作であり、彼らの訴求モデルなのだろう。
◆専用設計で成し得た「BEV感のなさ」
MINI クーパー SEでは、さっそくその走りだが、スタートから終始BEVを運転している感覚は薄い。すでにリリースされている『カントリーマン』がそうであったように、このクルマもまた高いレベルのプラットフォーム+シャシーセッティングがされているようだ。
具体的にいうならば、床下やバネ下の重さを感じない。多くのBEVが低速域で“鉄ゲタ”を履いているような感覚を得るが、それが皆無なのだ。クルマは初動から違和感なく、ヨーロッパ特有のランナバウトを回るだけで軽快さを感じる。
MINI クーパー SE驚くのはそれを専用設計で成し得たこと。カントリーマンはBMW『X1/X2』とプラットフォームを共有したがこいつは単独。後に5ドアのMINIクーパーが登場するであろうが、それくらいだ。BMWとのシェアは予定していないと聞く。
つまり、それだけコストをかけているのだろうが、出来上がった走りに開発陣は相当手応えを感じていると思う。カントリーマンの開発でバッテリーの積み方、搭載位置などベストな方法を得たに違いない。それくらい違和感がないのだ。
◆「ゴーカートモード」もある!パワフルな走り
MINI クーパー SEそんな走りだけに、長く続くワインディングでは少々スピード域が上がってしまう。進入速度を極端に落とさずともクルッとキレイにラインをトレースする。ただ、BEV的なパワーはガソリン車とは違い、時として太いトルクを発生させる。コーナー出口付近でガバッと踏み込むとフロントタイヤがアンダーステア方向へ誘うから要注意。この辺は少々慣れが必要だろう。まぁ、言ってしまえば、このトルクステアもまたFFぽい動きでもあるが。
それだけパワフルなので、タイヤのパフォーマンスはそれなりにあった方がいい。試乗車が225/40R18のミシュランを履いていたのはそんな理由だろう。ただ、これだと多少のピッチングは発生する。
MINI クーパー SEそれもMINIらしさといえばそうだが、日常的に使ったり、他人を乗せる機会の多い人は少しダウンサイズした方がベター。グレードにもよるが、16インチ、17インチがそれぞれデフォルトで用意されているようだ。
ドライブモードは7種類ある“エクスペリエンス”と一部連動する。“グリーン”ではエコ走行になるし、“ゴーカート”ではアグレッシブな設定になる。パワステやアクセルの反応が変わるセッティングだ。ダンパーは固定式なので、ドライブモードでの変化はない。
◆他ブランドとは違うワクワクがあるインテリア
MINI クーパー SEと言ったのがロードインプレッションだが、このクルマの醍醐味はもしかしたらインテリアかもしれない。
従来型にはあったメータークラスターを廃止し、センターの大型ディスプレイとヘッドアップディスプレイでさまざまな情報を取り出すスタイルとなった。特に大型ディスプレイの使い方は新しく、前述した7種類ある“エクスペリエンス”はここでそれぞれの世界を表現する。テキスタイルもそう。これまでの自動車の内装とは異なる素材選びをしている。
この辺は文字で説明するのは難しいのでディーラーへ足を運んでみるといいだろう。何か他のブランドとは違うベクトルに進んでいるワクワクさがそこにある気がする。
MINI クーパー SE九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。
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