ちょっとやそっと乱暴な扱いをしたくらいではビクともしない昨今のクルマですが、そのダメージは確実にクルマに蓄積されていきます。特に日常的にやってしまうことは、繰り返しダメージを受けることで、何気ない動作であっても、故障の原因になってしまうことも。愛車の寿命を伸ばすために、日頃から心がけたいポイントをいくつかご紹介しましょう。

文:吉川賢一/アイキャッチ画像:Adobe Stock_ TWEESAK/写真:Adobe Stock、写真AC

駐車時は「クルマ止めに当ててから少しだけ前進」

 駐車場にクルマを止めるとき、クルマ止めがある場合は、クルマ止めにぶつかるまで下がるのがマナーですよね。ただこのとき、クルマ止めにタイヤを強く押し付けている状態は、クルマを痛めつける行為です。押し付けることでタイヤにできてしまう凹みは、短時間の駐車であればそれほど問題にはなりませんが、たとえば週末しかクルマに乗らないという場合は要注意。毎日クルマに乗る場合でも、駐車のたびにクルマ止めに強く押しつけていると、タイヤとつながっているサスペンションなどにダメージが蓄積されていきます。

 クルマを駐車する際は、一度クルマ止めにゆっくりとタイヤを当てたあと、少しだけ前進(前進駐車の場合は後退)して、クルマ止めからわずかに離すように止めること。これだけで、足回りにかかる余計な負荷を減らすことができます。

クルマ止めにタイヤを強く押し付けている状態は、クルマを痛めつける行為。一度クルマ止めに当てたあと、少しだけ前進してクルマ止めからわずかに離そう(PHOTO:Adobe Stock_ xiaosan)

Pレンジはパーキングブレーキの後

 また、駐車する際のシフトチェンジの順番も、気を付けたいポイント。近年の新型車は、Pレンジに入れると自動でパーキングブレーキをかけてくれるクルマが増えていますが、正しい順番は「パーキングブレーキをかけた後に、Pレンジに入れる」です。手引き式や足踏み式パーキングブレーキの場合、まずPレンジにいれ、そのあとパーキングブレーキをかける人が多いのですが、実はこれは適切な順序ではありません。

 Pレンジは、トランスミッション内部の歯車に爪(パーキングロックポール)がかかり、シャフトがロックされることで回転しなくなりますが、タイヤ自体の回転がロックされるわけではないため、Pレンジに入れたあとブレーキペダルから足を離すと、わずかにクルマが動いてしまいます。例えば、坂道などでPレンジのみを入れた状況だと、パーキングロックポールだけがクルマの前後移動を抑制することになり、トランスミッションが本来持っていない役割をすることになってしまうため、クルマを痛めつける行為となってしまうのです。

 似たような話で、以前は、「クルマが完全に停止する前にDからRレンジにすると、クルマが壊れてしまう」と、いわれていましたが、昨今のAT車では、ドライバーがシフトを操作したあとに、システムがスピードやエンジン回転数などからシフトチェンジのタイミングを判断してシフトが切り替わるという仕組みになっているため、クルマが動いている状態だと、ドライバーがDレンジからRレンジへシフト操作をしたとしても、普通はシフトが切り替わることはないそう。

 駐車時はまた、クルマを動かさずにハンドルを回す「ハンドルの据え切り」にも注意したいところ。接地面に力が集中することで削られてしまい、タイヤを痛める原因になってしまいます。

駐車する際、Pレンジにいれてからパーキングブレーキをかける人が多いようだが、パーキングブレーキをかけた後に、Pレンジに入れるが正しい順番(PHOTO:Adobe Stock_あんみつ姫)

オイル交換をしないとエンジン内に汚れが蓄積していき、最終的にはエンジン停止に

 カーメンテナンスの中でも、基本中の基本である「オイル交換」ですが、昨今は、エンジン自体の耐久性に加えて、エンジンオイルの耐久性も向上していることで、オイルの消耗や劣化のスピードが抑えられており、以前よりも頻繁な交換が必要なくなってきています。走行中やアイドリング時にエンジンストップするハイブリッド車は、エンジンオイル自体が汚れにくいため、さらに交換サイクルは長くなります。

 しかしながら、交換しなくてよくなったわけではありません。自動車メーカーでエンジン設計を担当していた人によると、オイル交換の目安とされるタイミングを過ぎたとしても、直ちにエンジン性能に影響が及ぶことはないものの、エンジンオイルは徐々に性能劣化し、潤滑や冷却といった役割を徐々に果たせなくなっていき、オイルスラッジと呼ばれる汚れがエンジン内部で蓄積、あるタイミングで焼きつきを伴って、エンジンは動作不良となり、最終的には停止にいたってしまうそう。

 クルマの種類や年式、季節や気温、地域、運転操作など、使用状況によってオイルの汚れ具合は変わってきますが、オイルの汚れ具合はなかなか判断が難しいもの。推奨タイミングはそのために設定されているものであり、どんな使用環境でも問題なく乗り続けるには、やはり推奨タイミングで交換するようにしたいところです。

エンジンオイルの汚れ具合を確認するのはなかなか面倒かつ、汚れ具合の判断は素人には難しい。そのため、推奨タイミングが設定されている(PHOTO:Adobe Stock_buritora)

燃料タンクはなるべく空に近い状態にしないほうがいい

 また、「燃費が悪くなるので、給油する際も半分までしか入れない」という人もいるようですが、これも使い方によっては、クルマを痛める行為となってしまう可能性があります。昨今の燃料タンクはほとんどが樹脂製であるため、燃料でタンク内が満たされていなくても錆びることはありませんが、タンクが空に近い状態が続くことで、燃料ポンプに負担がかかってしまうのです。

 燃料ポンプは、タンク内の燃料によって、冷却され潤滑されていますが、燃料が少なくなるとポンプが燃料を吸い上げることができなくなって空回りしてしまい、ポンプが痛んでしまうのです。特に坂道などではその状態になりやすいため注意が必要です。

 燃料の残量は、燃費に対して影響がないわけではないですが、燃費に関しては、それよりも運転操作の仕方のほうがより影響が大きく、ガソリンスタンドの場所によっては、わざわざスタンドに出向く燃料のほうがもったいないという考え方もあります。基本的には、燃料は満タン給油でOKですが、2~3ヵ月に一度しか給油しないような走行距離の少ない人は、ガソリンが劣化する心配もあるため、満タンまでしないほうがいいかもしれません。

基本的には、燃料は満タン給油でOK。ただ、あまりクルマを動かさない人は、ガソリンが劣化する心配もあるため、満タンまでしないほうがいい(PHOTO:Adobe Stock_Haru Works)

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 次々と新しいものが生み出され、どんどん便利になっていく世の中。古くなってしまったものは使いづらく、さっさと買い換えたほうが賢明という考え方ももっともですが、愛着あるものを熱心に手入れし、使い続けることもまた、楽しいことであり、充実感につながることだと思います。いまの愛車がお気に入りの一台であるならば(もちろんそうでなくても)ぜひ、前述のようなことを習慣にし、愛車を長く楽しんでください。

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