石油大手のシェルは2024年6月17日、オランダ・アムステルダムに電動のトラックと船舶の両方に対応する急速充電器を設置したと発表した。現行の標準規格を大幅に超えるメガワット級の大電力に対応する。

 現状ではデモンストレーションを目的としたものだが、港で働くトラックに加えて、フェリーやタグボートなどが電動化されれば港湾の電動化と脱炭素が進みそうだ。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Shell plc

トラック・船舶両用のメガワット充電器

コンテナの移動などを行なっているトラックは多く、脱炭素に向けて電動化が必要となっている

 石油・エネルギー大手のシェルは、電気トラックと船舶の両方に対応したメガワット充電器を開発し、オランダにある同社のエネルギー移行キャンパス・アムステルダム(ETCA)に設置した。

 1MW(メガワット)は1000kWにあたり、最近、欧州の標準規格として普及が始まっているCCS(コンバインド・チャージング・システム)充電方式の中でも大型トラックなどに対応する350kWチャージャーのおよそ3倍の大電力だ。

 なお、大量の電力を必要とする大型EVトラック・バスなどのために、1MW以上の大電力を扱えるMCS(メガワット・チャージング・システム)の規格標準化が、CCSと同じくドイツのCharINを中心にすすめられているが、その作業はいまだ完了していない。

 欧州系の一部トラックメーカーなどは、標準化前からすでにMCSへの対応を発表している。

 シェルのeモビリティ担当のゼネラルマネージャーを務めるヒルマー・ファン・デン・ドール氏のコメントは次の通りだ。

 「私たちは、輸送セクターのお客様の脱炭素をお手伝いしたいと考えています。バイオ燃料とLNGへの投資に加えて、弊社は電動モビリティにも投資を行なっています。

 電動のトラックや船舶は、まだ大量にあるとは言えませんが、急成長する市場に先駆けて取り組みを進めています。これは、より多くのクリーンなエネルギーソリューションを提供するという弊社の目標と一致しています」。

 シェル・マリーンの社長のメリッサ・ウィリアムズ氏は次のように付け加えた。

 「今回のソリューションは、サプライチェーンの一部に水上輸送を利用している運送会社にとって助けになると信じています。海運会社はサービスを提供するために水・陸の両方に施設を持っていることが多いからです。

 このメガワット・チャージャーは大型トラック以外にも港湾用のさまざまな船舶を充電できます。たとえば艀(はしけ=バージ)、タグボート、サービス船、フェリーなどです。この技術がどのように利用され、展開されていくのか楽しみにしています」。

ソーラーパネル3600枚による再生可能電力

港湾内での曳航や浚渫作業などに従事する船舶の電動化も重要だ

 メガワット・チャージャーはETCAが備えるマイクログリッドに接続されている。この電力網はエネルギーの生産・貯蔵・供給まで統合したもので、屋上に設置した3600枚のソーラーパネルと、定置式の蓄電用バッテリー、乗用車用の119台のEV充電器、水素を製造するための電気分解装置やその他の研究用機器などを含んでいる。

(EV充電器は主に従業員用とのことで、AC普通充電が110基、DC急速充電が9基)

 様々な船舶、車両、バッテリータイプに対応するべく、新開発のメガワット・チャージャーは、2つの異なるアームを備えている。海上に張り出した1本の回転式アームは船舶専用となり、もう一本のアームは大型トラック・バスの充電用に2つの充電口を備えるようだ。

 シェルはこのイノベーションが標準規格となり、ユーザーが異なるケーブルとコネクターを使い分ける必要がなくなることを願っている。それぞれのアームはCCS方式のセカンドアダプターを備え、様々な車両や船舶を充電できるという。

 今回のメガワット・チャージャーはデモンストレーション用のセットアップだが、実際に利用可能となっており、メガワット充電機能を備えた車両や船舶であれば事前に予約すれば訪問可能だ。

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