昨今のアウトドアブームとネオクラシックカーブームでかつてのRVブームを牽引した存在の一人である日産ラシーンが再び日の目を浴びている。そこで今回は、このクルマの販売当時はどのような評価を受けていたのか? ベストカーが掲載した新車当時の記事をリバイバルし過去を振り返っていこうと思う。

この記事はベストカー1995年1月26日号(著者はベストカー編集部宇井弘明)を転載し、再編集したものです

■ラシーンは家族優先主義のクルマだった

「よ~し、次に買うのはRVだ」とその気になるクルマであったラシーン

 噂のラシーンがついにやってきた。乗用車とも違う、またこれまでのRVとも違うラシーン。独創的なスタイルで登場したラシーンとはどんなクルマなのか、一番試乗をお届けしよう。レポートはラシーンをもっとも選びそうな年代のオトーサンを代表して本誌・宇井が担当!

 昔、オトーサンの休日は、ゴロ寝か、ゴルフかパチンコというのが相場だった。

 経済成長真っ只中のことだが、最近は違う。もはや週休2日は当たり前、せっかくの休みな~んていう感覚は昔ほどじゃないし、それよりなにより、女性の地位向上は家庭内にもしっかりと定着しているから、家でゴロ寝なんて決めこもうもんなら、激しい口撃に合ってしまう。

 火事の手伝いはもちろん、子供の世話、犬の散歩まで休むどころじゃない。知らないうちに飼いならされてしまったオトーサンの潜在意識は訴えた。家の仕事から解放される方法はないかと。

 これまた知らないうちに誘われるまま家族で参加したキャンプに行ってオトーサンはビーンときた。これだ! 子供は喜ぶわ、口うるさい奥さんもニンマリ。こうして海へ山へ繰り出した。

 最初はコロナやブルーバード、 マークIIで出かけていたが、キャンプ場につくと、ワゴンだのIBOX、クロカンタイプの4WDだのがやたらと目に付き、「よ~し、次に買うのはRVだ」と決断しちゃったりする。

■ラシーンの開発秘話って?

羅針盤から命名されたラシーン

 とまあ、現在のファミリー層のアウトドア派の多くは、こうした軌跡をただってRVを選びをしているんじゃないでしょうか。そんな”日本中流家庭アウトドア症候群”(勝手に付けました}御用達の新ジャンルカーが日産から発表された。その名はラシーン(羅針盤から命名)。

 1993年東京モーターショーに展示されたし、ここ数号にわたって本誌でも紹介しているのでご記憶の読者も多いと思う。子供が描いた絵のような個性的なスタイルのボディに1497cc、105馬力の比較的小さなエンジンを載せ、しかも4WDというRVだ。

 これなら確かにキャンプ場で、隣の人とコンロやテーブルのブランド戦争から、クルマ部門では一歩抜け出せそうではある。

 ラシーンの開発責任者の宮本健主幹も「どこにもないスタイル」と強調しているように、このラシーンのスタイルについては個性的とは誰もが認めるが、好きか嫌いかという点では真っぶたつに分かれる。

 写真で見るより実車のほうがはるかにいいのだが、ハッキリいってカッコ悪いと思う。

 しかし、現代のようにクルマのデザインがほとんど同じ方向を向いている中にあって、宮本主管の決断はわからないわけでない。たしかにこんなコミカルで、ちょっとレトロチックで他の乗用車と違うという主張も当然”あり”だろうし、誰かがやらなければならなかったことかも知れない。

 これらをラシーンでやったのは正解で、月販5000台以上売るクルマではなかなかできないものだろう。

記事リンク

前の記事

パイクカーの最後[ラシーン]は7万台も売れたヒット車だった!? エンジンもブレーキも[まず壊れない]驚きの耐久性

次の記事

登場が20年の早かった[スカイラインクロスオーバー]!? 今こそ[ラシーン]復活求む! 絶版SUV3選

■最低地上高170mmが生み出すプラスワンが魅力

170mmと普通の乗用車より余裕のあるロードクリアランスで、大きな窪みのある川原でもグイグイいける

 で、そのラシーンにニッポンのオトーサンを代表してとにかく乗ってみた。試乗したのは2台、一台は最上級グレードのタイプIII、そしてもう一台は売れ筋のタイプII。違いは装備の差だけだ。

 まず乗り込んで気づくのは視界のよさ。ボンネットの先端まで見えるので見切りがいいし、取り回しはきわめてラク。後部もCピラーが太いわりには死角が少なく、安全確認がしやすい。

 そんなのは当たり前だといわれそうだが、ボンネット先端まで見えるクルマは意外と少なく、とくにラシーンのようなタウンユース中心に使われるような場合、取り回しがいいのはウレシイところだろう。

 試乗車は全車ATということもあり、1.5LのATではやや力不足かとも思ったが、これが軽快。けっして速いわけじゃないがキビキビ走ってくれるのだ。このクラスとしてはちょっと重めの1.2tという車両を感じさせずに走ってくれる。

 けれども登り坂ともなると、やや苦しい。1.5Lで13.8kgmのトルクは充分なのだが、ここでやはり重さが顔を出してしまう。

 しかし、それも大きな不満というわけではなく、クラス相応といったところ。

 それよりも驚いたのは悪路走破性の高さだ。もちろん本格的というわけにはいかないが、タップリとったサスペンションのストロークと、わずか20mm程度だが、170mmと普通の乗用車より余裕のあるロードクリアランスで、大きな窪みのある川原でもグイグイいける。

 乗用車ではソロソロ走らなければならないようなところでもスンナリ走れてしまう。こうした場所はラシーンにとってもイレギュラーなところだろう。

 しかし、乗用車では気遅れするようなところでも入っていけるというのが、このラシーンのプラスワンの魅力なのだ。ハンドリングもしっかりしているし、ブレーキのタッチもいい。

 特別スポーティというわけじゃないが、フツーの乗用車から派生した新ジャンルのクルマと考えるのが、このラシーンを語る場合自然だろう。

 タイヤは乗り心地を重視しているため、ちょっとプアーで、舗装路のコーナーではズルズル滑る。

 そこでコントロール性のよさを確認できた反面、もはやラシーンでも相当高いレベルの仕上がりなんだから、フツーのセダンより、他とは違うこんなクルマを選ぶのもいいかも知れないと思ったニッポンのオトーサンであった。

■いち大学生アルバイトより

ラシーン フォルザは中古車価格で約331万円と結構良いを付けられている

 私は現在20歳の大学生アルバイトです。現在はマークX 250G S Packageに乗っています。

 ただ本格的なスポーツ車はこのクルマが初で、今まではRXやエスティマなどのSUV、ミニバン系を幼い時からずっと乗っていたこともあって、クルマ好きの中では珍しい? ミニバン、SUV大好きっ子な人生を歩んでまいりました。

 さて、昨今ではネオクラシックカーブームが世界中で巻き起こっていますね。スカイラインGT-R、RX-7などが電動化前の「最後のチャンス」とばかりに人気がうなぎ上りです。

 それと同時に起きているキャンプブームの影響か日産 ラシーンもジワジワと中古値段が上がってきており、現時点で一番高いのが「ラシーン フォルザ 2.0 4WD ワンオーナー 4WD 2000CCモデル」となっており、価格は約331万円。

 フォルザは1998年のマイナーチェンジ時にラシーンの「スポーティバージョン」として追加されたモデルであるが、新車価格が約200万円だったので良い固体が出たら思い切って買うのもありだと考える。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。