2021年秋の発売開始以降、累計販売台数2万1000台を超え、販売好調のノートオーラNISMO。その一方で、4WDモデルや上級装備を望む声が寄せられたという。そんな声に応えて7月18日に新設定された「ノートオーラNISMO tuned e-POWER 4WD」。そのノートオーラNISMOの4WDモデルを追浜のテストコースで初試乗!

文:ベストカーWeb編集部・小野正樹/写真:ベストカーWeb編集部

■センスのいいアグレッシブさが特徴のエクステリア

ノートオーラNISMO tuned e-POWER 4WD。4WD専用のフロントフードデカール、フロントグリル、専用のENKEI製アルミホイールを装着

 商品コンセプトは「Agile Electric City Racer」=俊足の電動シティレーサー。走行性能の高い4WDを追加したことで、空力性能を向上させると同時にデジタルなモード感とレーシングテクノロジーを融合させたモダンさを表現。

 ボディカラーを見て「おや、この色はR35GT-R NISMOのステルスグレーでは?」と思った方はかなりの通。そう、R35GT-R NISMOの2022年モデルに設定された特別仕様車「スペシャルエディション」に用意されたNISMO専用色の「NISMOステルスグレー/スーパーブラック」と同じ色だ。

 まずはエクステリアから見ていこう。2WDのノートオーラから変更を受けたエクステリアの内容は、ノートオーラNISMO 4WD専用のフードデカールのほか、エアロダイナミクス向上を目的とした、フロントグリル、リアバンパー、アルミホイールの空力デザインへの変更だ。

 フロントボンネット中央のデカールはグロスブラックの地に、4WDをイメージさせるマットブラックの4本のラインを入れて2WDと差別化。

 NISMOが手がけただけあってエアロダイナミクスについても相当力が入っている。4WD化に伴って、2WDモデルからCD値(空気抵抗係数)を悪化させることなく、クルマを浮かせようとする揚力の係数=CL値を向上させた。

 ドラッグ(空気抵抗)の低減を意識し、フロントグリルは開口部を最小化したフラッシュタイプのデザインとした。と同時に、空力性能だけでなく、見た目も大事ということで、硬質でモダンなリフレクションを採用した「クリスタルカットグリル」が煌びやか。

ENKEI製7×17インチサイズのアルミホイールに205/50ZR17サイズのミシュランパイロットスポーツ4を履く

 足元には、4WDモデル専用の7×17(2WDは6.5J)サイズのENKEI製アルミホイールを装着。鋳造だがENKEI独自のMAT工法により、鍛造並みの強度を確保しているところはさすがだ。

 2WD NISMOのホイールと比較して12%の軽量化を果たしたうえで、ノートオーラから20mmローダウンによるドラッグ低減とダウンフォースを向上させている。装着タイヤはハイスペックスポーツタイヤの205/50ZR17、ミシュランパイロットスポーツ4。

いかにも空力がよさそうなリア回り

 リア回りのエアロダイナミクスはもはやNISMOしかできないかもしれない圧巻レベル。NISMO専用デザインのリアバンパー左右に配されたリアサイドスプリッターは、ボディサイドからの気流のバッサリ、剥離を促すという。

 このルーバーが入ったこの左右のツインウイングは、いかにも空力に効きそうな造形で、見た目もカッコいい。その下の赤いレイヤードリアディフューザーは大型化され、アンダーフロアからの風の巻き上げを抑制、ダウンフォースを強化している。

 実際見た印象は、いかにも「やりすぎ」、「大人気ない」という残念なレベルではないので、50代のおじさんでもイケると思う。

リアバンパー左右に配されたリアサイドスプリッターは、ボディサイドからの気流の遮断する

■ガチガチで固すぎない、速くて安心な電動四駆ホットハッチ!

日産自動車追浜工場に隣接しているグランドライブで試乗

 搭載されるパワートレーンは、HR12DE型1198㏄直3エンジンが最高出力60kW(82ps)/6000rpm、最大トルク103Nm(10.5kgm)/4800rpmを発生。

 これに、100kW(136ps)/3183~8500rpm)、300Nm(30.6kgm)/0~3183rpmを発生するフロントモーターに加え、4WDモーターを搭載している。

 ベースのノートオーラ4WD(マイナーチェンジモデル)のリアモーターに比べ、最高出力が約20%アップの50kW→60kW、最大トルクが約50%アップの100Nm→150Nmに向上させている。

 試乗テストコースは日産自動車追浜工場内にある「グランドライブ」。バンクやS字コーナー、ギャップのあるストレートだけでなく、スラロームもあり、おおよそ、クルマの素性を試すには適したコースだ。

 スターターボタンを押し、コースに入る。割りと強めにアクセルを踏んでいくと、150Nmのトルクの恩恵で加速フィールは力強い。これでエコモードなのかと驚くほどで(基準車はSPORTモード相当)、その上のノーマルモードはより軽快になる。

ドライブモードセレクターは3種類。NISMOモードにするとレスポンスがよくなり俊敏になるとともにフロントの駆動力が減り、リアの駆動力が増える

 NISMOモードに切り替えると、後輪駆動力配分が大幅に増すとともにレスポンスが圧倒的によくなり、アクセル開度によってクルマをコントロールできるほど俊敏になる。ちなみに前後重量配分は2WDがフロント64%対リア36%、4WDはフロント58%対リア42%。

 180度コーナーに入ると、ココはまさにノートオーラNISMO 4WDの真骨頂! コーナー入り口でブレーキングし、コーナー半分を過ぎた頃に、アクセルをベタ踏みしていく。

 このような場面では2WDだとアンダーが出て車体は外側に出ていってしまうのだが、4WDだとリアが滑るどころかグイグイと喰いついていき、まだイケる、まだイケるという感じで、ハンドルの切り増しをせずにコーナーをクリアしていく。

 右、左と切り返していく低速域のS字コーナーでも、リアがズリッと滑ることなくクリアしていく。サスペンションの追従性が高く、バンプ(沈みこむ)、リバウンド(浮き上がる)もさほど大きくない。レーンチェンジにおいても同様だ。

コーナーを半分過ぎたあたりから出口にかけてアクセルを踏んでいくと、リアが滑らず、路面に喰いついていく

 狙った通りにトレースしていくこの感覚は何かに似ている。そう、R32GT-RのアテーサE-TSのコンセプトに近い。アテーサE-TSは、リアを中心とした4WDで、リアが滑る時にフロントタイヤが引っ張っていく4WDだったが、このノートオーラニスモ4WDはそのコンセプトを前後独立モーター4WDで実現している。

 同じコーナーを2WDと4WDで攻めた場合、110㎏重い4WDは不当然不利になるが、2WDは軽い分コーナーをクリアする速度は早くなるが、コーナー途中から出口からの立ち上がりはグリップの高い4WDが速い。

 とにかく旋回時のハンドリングが気持ちいいのひと言。路面の接地性も高く、ステアリングインフォメーションもとてもFFベースのハッチバックとは思えない高いレベルだった。

狙ったとおりにトレースしていき、ハンドルを切り増ししていくこともなかった

■NISMOのこだわりがハンパじゃない!

新たにパワーリクライニング機構(運転席&助手席)の付いたNISMO専用チューニング「RECAROスポーツシート」がメーカーオプション設定。ホールド性も抜群でスポーツ走行にはぜひ欲しい

 シャシーはどのようにチューニングされているのだろうか? フロントストラットは外筒の板厚をアップし、フロントのコイルスプリングはバネ定数を36%アップ(2WD/4WD共通)。

 リアのショックアブソーバーはモノチューブ式で、リアのコイルスプリングのバネ定数を33%アップとしている(2WDは25%アップ)。

 モノチューブは、ツインチューブに比べて受ける面積が大きくガス圧が高いので、応答性がよくなり、路面からの入力に対してレスポンスよく減衰力が発生するのが特徴。

 これに、2WDの6.5Jから7Jとし、2WD NISMOに比べて12%軽量化したENKEI製アルミホイールと、ミシュランパイロットスポーツ4を組み合わせることで、NISMOが理想とする「路面との対話にこだわるシャシーチューニング」を実現している。

 では足がガチガチで胃袋がまさぐられるレベルなのか、と聞かれれば「違う」と答える。ストレートにはギャップが設置されていたが、それを乗り越える際はバタンと一発で収束していた。

 スポーツモデルにしては、足は少し硬いといったレベルだろうか。乗り心地も悪くない。上質の一歩手前といったところか。

 全体的に、NISMO開発陣の心意気が随所に垣間見えるので、1990年代以降のスポーツモデルを体感してきた筆者には、まとめ具合が「秀逸」と感じた。ただし、首都高のギャップや路面の悪い一般道でもう一度試してみたい。

 価格はノートオーラNISMO tuned e-POWER 4WDが347万3800円、2WDのノートオーラNISMOが307万2300円。

 今回、運転席の標準シートにパワーシートが標準装備となったが、新たにパワーリクライニング機構(運転席&助手席)の付いたNISMO専用チューニング「RECAROスポーツシート」がメーカーオプション設定されている。またBOSEパーソナルプラスサウンドシステムも新たにメーカーオプション設定されている。

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