ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回はシボレー 7代目コルベット(2014-2019年)試乗です!(本稿は「ベストカー」2019年10月10日号に掲載した記事の再録版となります)

撮影:西尾タクト

■力ずくでねじふせる! コルベットに乗るとトランプの政策がよくわかる!!?

シボレー コルベットGSクーペ(8AT・1226万8800円)…2013年1月に米国で登場し、2014年から日本へのデリバリーを開始した7代目C7コルベット。今年夏には歴代初のミドシップとなった次期C8が発表され、これが最後のFRコルベットとなる

 当連載で私が乗りたいクルマを指定することはいっさいない。すべて編集担当の飯干さんが決めている。

 基本的にはニューモデルを用意していると思うのだが、なぜか今回はモデル末期のコルベットがきた。

 本国アメリカでは新型の8代目が発表されたこのタイミングでなぜなのか? 完全に飯干さんの個人的趣味である。

 いつもの撮影場所に行くと、「すみません。今日は私が乗りたいクルマを持ってきました」とニコニコ顔だ。「すみません」という言葉と態度が完全に乖離している。私は今日、飯干さんの趣味に付き合わされる1日になるのだ!

 といっても、私もコルベットは大好きなクルマだ。最後のリトラクタブルヘッドライトである5代目C5コンバーチブルを所有していたこともある。

 かつて、フロリダの街をレンタカーのカルタスコンバーチブルで流している時、ぶち抜いていったのがC5コンバーチブルだったのだ。その印象が強烈で帰国してすぐに買ってしまったのである。

 8代目はミドシップになるという。私はそのあたりにこだわりはないのだが、飯干さんは「これが最後のFRコルベットなんです!」と力説している。

エンジンは466ps/64.2kgmのV8、6.2L OHVで、今となっては珍しくなった大排気量NAの気持ちよさを味わえる。8ATと7MTがあり、スーパーチャージャー659psのZ06もラインナップする

 そんなことより、コルベットは代を重ねるごとにどんどん凶暴になっていくのがちょっと寂しい。

 映画『ジュラシックパーク』は1作目が一番優雅でロマンチックだった。2作目以降、恐竜たちが人間を襲うようになって「流れが変わったな」と思ったものだ。

 ゴジラも昔は子どもたちのアイドルだったのに、最近はただの暴れん坊になっている。それとコルベットが重なるのだ。

 その切なさはあるのだが、GT-Rと一緒で、存在するだけでありがたいのも確か。細かいことはどうでもいいという意見もある。

 運転席に座ったとたん「あ~、コルベットだ!」と叫んでしまった。私が乗っていたC5からもう20年以上経っているのに、包み込まれるような感覚とロングノーズの眺めはC5とそっくり。このへんの伝統の活かし方はうまいなと思う。

包み込まれる感覚はコルベットならでは。GS(グランスポーツ)クーペはルーフを外してオープンエアを楽しめる

 見て触っているうちに「コルベットはやっぱりいいな」という気持ちになってくる。街でフェラーリやランボルギーニを見るよりもコルベットを見るほうが羨ましい。

 フェラーリやランボは高値安定物件でお金があれば躊躇なく買えるが、コルベットはアメリカ車へのロマンや憧れがなければ絶対に買わないクルマだからだ。

 割れた蛍光灯に向かってダイブするデスマッチみたいなものでもある(笑)。

歴代初の角形テールランプを採用したC7。センターの4本出しマフラーが強烈な存在感を醸し出している!

■靴のまま部屋に入るアメリカ文化そのものだ

ボディサイズは全長4515×全幅1970×全高1230mm、ホイールベース2710mm、車重1600kg

 走らせるとv8、6.2Lエンジンの素晴らしさがストレートに伝わってきて、さらに魅力を増す。

 コルベットに乗っているとトランプ大統領の政策がよくわかる。力ずくでねじふせるのがアメリカのやり方なのだ。

 私が今一番欲しいクルマはアルピーヌA110なのだが、これはアルピーヌを超えたかもしれない。

 ついでに言うと、私は寝る前に国産車や輸入車の最新ベスト10を考えるのが趣味で、昨晩はマツダロードスターが1位になった。でも、それももはやどうでもいい。

 コルベットにはアルピーヌやロードスターなどの繊細なスポーツカーを吹き飛ばす迫力がある。

 とにかく走りが素晴らしい。それでいて運転に神経を使わないのがまたいい。

 目を三角にして飛ばすのではなく、助手席の人と会話を楽しみながら、リラックスして走れるのがこのクルマのよさ。

 コルベットは靴のまま部屋に入っていくアメリカの文化がそのままクルマになっている感じなのだ。

 一方で、それだけにコルベットには「四季がないな」と思う。乾期と雨期しかない地域みたいなもので、そこの人たちは1年中同じものを食べている。

 それぞれの季節に旬のものがある日本とはまったく違っていて、そこをどう捉えるか。

 完全にアメリカ人の好みに合わせたクルマであり、日本人はなかなかここまでこないだろうと想像できてしまうのだ。

 そろそろ結論を出そう。日本人の、特に若いクルマ好きは一度コルベットにチャレンジしてほしい。新車でなくて安い中古車でいい。

 私が乗っていたC5なら200万円台はもちろん、100万円台の中古車がごろごろあるし、C6でも200万円台のクルマがけっこうある。

 安いコルベットに一度乗ってみるのは素晴らしい経験になるはずだし、乗ってみて好みに合わなければ売ればいいだけのこと。

 元が安ければ、そこからの値落ちは少ないだろうし、ちょっとしたクルマの冒険にコルベットは最高の素材となる。ぜひ検討してほしい。

大パワー車なのに気を使わずリラックスして走れる。そのあたりもアメリカ車の美点のひとつだ

●テリー伊藤今回のつぶやき

 新車でなくて安い中古車でいい。若いクルマ好きたちに、ぜひ一度、コルベットがある生活を楽しんでほしい!

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。