いよいよ夢物語ではなく、現実的な話になりつつある宇宙旅行。世界各地では様々なアイディア、発明により選択肢が増え始めている。ここでは2025年にスタートすると言われているスペースシップの最新事情をお届けしてみたい

文:古賀貴司(自動車王国) 写真:ベストカー編集部

■ヘリウム気球で成層圏の外を旅するツアー

見た目は限りなく気球に近いスペースシップカプセル。吊り下げられた小さいカプセルにパイロットと乗員が搭乗するそうだ。

 スペイン初の宇宙探査企業であるEOS-X Spaceは、2025年までにスペースシップカプセルで乗客を成層圏の外縁まで飛行させる準備が整うと発表した。

 来年第3四半期頃から、同社の本社があるスペイン セビリアとアラブ首長国連邦アブダビから飛行を開始することを目指している。

 同社は、飛行を実現するために両国で2億3000万ドル以上をエンジニアリングと開発に投資しているそうだ。開発は既に最終段階で近々、スペイン空軍のパイロットと国立航空宇宙技術研究所(INTA)の協力を得て試験飛行する予定だという。

 2020年に初めてアイデアとして提案された加圧カーボンファイバー製のスペースシップは、ゼロエミッションのヘリウム気球で推進する。これは7人の乗客と1人のパイロットを地上約25マイル(約40km)、高度131,234フィート(約40㎞)まで飛行させることができるもの。

 各フライトは約5時間かかり、夜明けに出発し2時間かけて上昇し、高度40km地点で2時間滞在した後、1時間かけて降下して着陸するという。

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■富裕層向けらしく気球の中は快適空間

こちらが拡大したスペースシップの概略を示した図。

 スペースシップカプセルは言ってみれば熱気球の進化版で、空気がほとんどない上空を目指すので、カプセルは気球とは違って密閉型である。

 スペースシップカプセルは高級な内装が奢られ、快適な人間工学に基づくシートや、絶景が拝めるパノラマ窓、バー、トイレまで備えられている。

 1人あたりの飛行料金は15万〜20万ユーロ(約2,400万円~3,200万円)の範囲に収められる見込みだ。

 一般的な旅客機が到達する高度が12㎞前後、アメリカの高高度戦術偵察機、U-2が到達するのはその約2倍の22㎞程度。そして、EOS-X Spaceのスペースシップカプセルが目指している高度は40kmである。陸上で考えたら“たった40km”にもかかわらず、「上空」や「水中」となると実に遠い世界なのだ。

 なお、高高度飛行の世界記録を認定している国際航空連盟(FAI:World Air Sports Federation)では、空と宇宙の境界を100㎞に設定している。つまり、スペースシップカプセルを名乗りながらも厳密には「宇宙空間には達しない」というツッコミを入れることもできる。

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■サービス合戦が始めっている成層圏ツアー

公開された施設内の画像を見る限り、確かに快適性は高そうではある。

 そして、そんな成層圏宇宙気球旅行の競争が今、激化しようとしている。

 日本では某クレジットカード会社がカード保有者を対象に宇宙気球旅行の参加者を募集しているので、目にしたことがある人もいるだろう。フランスの1社とアメリカの2社も巨大な宇宙気球と加圧カプセルの開発に取り組んでいるのだ。

 3社の機体はデザインと性能が似ているため各社、アメニティで競い合っているのが面白い。例えばアメリカのSpace Perspectiveはスペースシップ・ネプチューンに「スペース・スパ」を組み込み、フランスのZephaltoはミシュランの星付きシェフによる機内メニューを提供する予定。

 また、アメリカのWorld Viewも豪華な機内食とバーサービスによる差別化をアピールしている。飛行機内でのアルコール摂取でさえ酔いが回りやすいのに、成層圏での飲酒は過酷な体験となる気がしてならない。

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