あちこちで見かけるようになったトヨタ ランクルーザー250だが、妙に気になるのがガソリン仕様の存在。価格的にも手ごろで車重も有利なのだが、高速走行時などのドライバビリティなどに厳しい意見も聞く。実際のところどうなのか。高速から市街地まで、実際にあちこち走って試してみた!

文:山本シンヤ/写真:池之平昌信

■ギアが4速に入ると印象がガラッと変わる

タウンスピードでは好印象の250のガソリンVXだが……

 4月18日に発売が開始されたランクル250。増産体制も相まって順調に納車も進められ、街中でも見かける機会が増えてきた。グローバルでは電動化パワートレインが設定されるも、日本向けは純粋な内燃機関のみ。自動車メディアの記事はディーゼル中心だが、ガソリン車はどうなのか? SNS界隈では賛否両論だと聞くが果たして……。

 ガソリン車のエンジンは163ps/246Nmを発揮する直列4気筒2.7Lの「2TR-FE」。3代目プラド(120系)から使われている2.5トン前後のモデルに搭載される縦置き定番ユニットで、6速ATとの組み合わせだ。ハード自体は4代目プラド(150系)から変更されていないと言うが、発進~日常域でのスムーズなドライバビリティのために制御系の見直しが行なわれている。

 一般道では低中速トルク重視の特性と4.777のローファイナル(ディーゼルは3.583)も相まって、ギアが1-3速までは、スペックを思えば必要十分なパフォーマンスはあると思うが(かつての3Yエンジンを思い出す少々苦しそうに回るざらついた音質にガッカリするが)、ギアが4速以降だと印象がガラッと変わり、力不足をリアルに感じる。

 そんなエンジンの力不足をATの変速タイミングでカバーしているのだが、その制御がとにかく駆動力確保優先のため、アクセルの踏み加減に関わらず容赦なくダウンシフト……。

 特に高速道路で定常走行(6速)から再加速のような状況では、ドライバーは少しだけアクセルを踏むやいなやギアが一気に4速(場合によっては3速)までキックダウン、エンジン回転が4000~5000rpmまで急上昇してしまう。それでも加速してくれればいいが、エンジンはワンワン唸るだけで加速は伴わず。筆者は思わず「君はフル積載の昔の商用車か?」と叫んでしまった。

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■操作に対してワンテンポ遅れるドライバビリティ

高速域ではシフトダウンのたびにエンジン音が高まりややノイジーに

 そこでDレンジではなくシーケンシャルシフトマチックを使って任意にシフトをしようとトライするも、ガソリン車用の6速ATはMモードではなくSモード……シフトダウンはドライバーの任意でできるがアップ側はDレンジと同じく勝手にキックダウンするので、どうにもならず。

 おまけに高速巡行時でもなかなかロックアップしてくれないので、操作に対してワンテンポ遅れるドライバビリティは、昔ながらのAT……と言った印象だ。

 もちろん、アクセルを少しずつジワーっと踏み、ゆっくり/ゆったりしたドライビングを心がければスムーズに走らせることも可能だが、かなり気を使ってコントロールしないとパワートレインとの意思疎通が難しいのは紛れもない事実である。

 このように書くと「ランクルの使命は目的地まで走り切る事、加速やシフト制御は二の次で良い」と意見も出てくるだろう。ちなみに開発者は「ガソリン車は街中での扱いやすさを考慮した」と語るが、それなら「ランクルだから」で片づけてはダメだと思う。

 このようにパワートレインはかなり厳しい評価だが、フットワークは逆に「ランクル250中ベスト」と言っていい仕上がりである。

■フレーム車を感じさせないガソリンの走り

直列4気筒2.7リッターガソリンの2TR-FEエンジン。163ps/246Nmを発揮

 まずはランクル250のディーゼル/ガソリン車共通の印象だが、GA-Fプラットフォームをはじめとする基本構成はランクル300と同じだが、操作に対する反応の素早さ、薄皮を3~4枚剥いだかのようなダイレクト感と正確性、吸収スピードを優先したスッキリした足さばきなどは別物と言ってよく、クルマの動きは「速やか」、「軽快」である。

 この辺りは250専用のスタビライザーやジオメトリー、サスペンションのセットアップに加えて、電動EPSやPDA(車線内走行時常時操舵支援)の採用も効いていると予想。

 更に重箱の隅を突いてみると、ガソリン車の走りの精度の高さが光る。例えば、連続するコーナーで素早い操作を行なうとディーゼル車は車体とフレームのヨーの収まりにズレを感じるのと、バネ下の重さや段差の乗り越え時に入力が縦方向だけでなく横方向に僅かに伝わってしまうフィーリングに、「やはりフレーム車だよね」を感じてしまう事が時々あるのだが、ガソリン車だとその現象はほぼなし。つまり、ガソリン車は掛け値なしで「フレーム車だと感じない」走りなのだ。

 この辺りは車両重量の差(150㎏前後)も影響していると思うが、ガソリン車の街中での扱いやすさを考慮したセットアップが、いい方向に働いていると予想する。

■街乗り中心なら悪くはないが……

それでもこの佇まいはやっぱりカッコいい!

 では、総合的に見るとガソリン車はお勧めめできるのか? かなり悩ましいが、条件付きなら「YES」である。

 まずは実際に試乗してみて動力性能に納得できた人。恐らくフレーム式のクロカンSUVのガソリン車、それも直列4気筒+4速AT時代の走りを知る人でなら許容範囲かな……と。クロカンSUVがブームだった頃のモデルは本当に走らないモデルもあったので(汗)。

 続いて、街乗りが中心であまり遠出をしない人、更には動力性能よりも見た目/雰囲気のほうが重要な人だ。パワートレインは総合的に見ると力不足だが、“日常域”に限定すれば必要十分レベルなので(実用燃費は決して褒められないが……)、そこを理解して割り切って乗るならアリだ。

 ただ、このようにお勧めできる人はかなり限定されるのも事実だ。価格を比べると同グレードでガソリン車はディーゼル車より85万円安いものの、「ガソリン車の安さだけにつられて買うべきではない」と言うのが、筆者の結論である。

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