中国の新興EV(電気自動車)メーカー、小鵬汽車(シャオペン)の業績に黄信号が灯っている。
同社は3月19日、2023年の通期決算を発表。同年の売上高は306億8000万元(約6405億7700万円)と前年比14.2%増加したが、伸び率は2022年(28.0%)の半分に減速した。一方、純損益は103億8000万元(約2167億2700万円)の赤字で、損失額が前年比13.6%拡大した。
小鵬汽車の苦況を象徴するのが利益率の悪化だ。2023年の通期の粗利率はわずか1.47%と、前年より10ポイントも急落した。同社のライバルで業績好調な理想汽車(リ・オート)の2023年の粗利率が22.2%、伸び悩みが伝えられる蔚来汽車(NIO)でも同5.49%だったのと比較すると、その差は歴然としている。
年20万台の目標達成できず
業績低迷の主因は、2023年6月末に発売した新型SUV「G6」の量産立ち上げに(部品調達の問題などで)手間取ったことにある。G6の生産は同年9~12月期にようやく軌道に乗り、同四半期の小鵬汽車の販売台数は約6万台と四半期ベースで過去最高を記録した。
しかし7~9月期までの納車遅延が響き、通年の販売台数は前年比17%の増の14万2000台と、目標の20万台に遠く及ばなかった。
さらに気がかりなのは、2024年に入って小鵬汽車の販売が失速したことだ。同社が公表した月次販売速報によれば、同年2月の販売台数は4545台にとどまり、前月より4割以上も減少した。
2月の販売台数の急減は、2024年の春節(中国の旧正月)が2月中旬だったため、(春節が1月後半だった)2023年に比べて営業日が少なかった影響が大きい。それでも、2月のG6の販売台数は1500台に届かず、蔚来汽車の「ES6」などの競合車種に逆転されてしまった。
G6の販売の変調は、中国の自動車市場でメーカー間の価格競争が激化し、相対的な割安感が薄まった影響が大きい。
「2024年の価格競争はますますエスカレートするだろう」。小鵬汽車の創業者で董事長(会長に相当)を務める何小鵬氏は、決算説明会でそう危機感をあらわにした。
小鵬汽車の経営トップの何小鵬氏は、中国自動車市場の価格競争激化に危機感を示す。写真は2023年10月の技術イベントに登壇した何氏(同社ウェブサイトより)同社は販売失速に歯止めをかけるため、販売ルートの拡大を急いでいる。2023年には中国各地の160社以上の自動車ディーラーと代理店契約を締結。2024年7~9月期中に全国の販売店数を600店に増やし、(これまで手薄だった)地方都市での販売を強化する。
法人向けサブブランドを投入
小鵬汽車は新たなサブブランドの立ち上げを準備しており、2024年4月に開催される北京モーターショーで第1号モデルを発表する。その成否も、同社の先行きに大きな影響を与えそうだ。
このサブブランドは、ネット配車サービス大手の滴滴出行(ディディ)のスマートEV開発部門が源流だ。小鵬汽車は2023年8月に同部門を買収。「MONA(モナ)」というコードネームで呼ばれる第1号モデルは、10万~15万元(約209万~313万円)の価格帯を予定し、当初は(配車サービスやタクシーなどの)法人向けを中心に月間1万台の販売を目指す。
本記事は「財新」の提供記事です。この連載の一覧はこちら経営トップの何氏は決算説明会で、サブブランドの成功の条件について次のようにコメントした。
「この価格帯で基本性能がしっかりした、高度なスマート運転機能を備える良いクルマを作り、なおかつ利益を上げるのは極めて難しい。それを実現するには、規模拡大によるスケールメリットの確保とシステム化を通じた業務効率の改善を強く推し進める経営能力が必要だ」
(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は3月20日
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