イイクルマは売れる、これは紛れもない事実だろう。ただ売れなかったから悪いクルマかと言われると、一概にそうとは言えない。世の中には、あまり多くの人気は集められなくても、人々に愛されたクルマが数多くある。今回はトヨタ車にスポットを当て、記録よりも記憶に残るクルマを3台セレクトしてみた。
文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部
■大人気兄弟の末っ子は最も豪華でシブいヤツ
ノア・ヴォクシーに続く、第三のコンパクトキャブワゴンとして登場したのがエスクァイアだった。時は5ナンバーミニバンの最盛期でもある2014年。大きな特徴は、ノア・ヴォクシーよりも、上質な高級感を身に纏っていることだ。
投入された背景には、かつてのトヨタにあったチャネル販売制が大きく関係していた。ヴォクシーを扱うネッツ店、ノアを扱うカローラ店に対して、トヨペット店とトヨタ店には、同規模のミニバンが無かったのだ。
上級車種を扱うことが多い両チャネルへ向けて、エスクァイアはノア・ヴォクシーよりも質を向上させることに主眼が置かれていた。
そのため、上級グレートにはクルーズコントロールや合皮シート、本革巻ステアリングや木目調加飾などが備わる。リアのオートエアコンや両側電動スライドドア、オートマチックハイビームやおくだけ充電といった、時代のニーズを先取りした装備も目立つ。
ボディカラーには黒の専用色「スパークリングブラックパールクリスタルシャイン」を設定し、ノア・ヴォクシーとの差別化も図られた。
その後、トヨタでは全車種併売化となる。これに伴い需要が先細りしていたエスクァイアは、2022年のノア・ヴォクシーフルモデルチェンジと同時に消滅した。
しかしながら、当時取り扱いをしていた、トヨタ・トヨペット両チャネルの営業マンや、同チャネルを利用するユーザーからは「ニーズに合った良いクルマだった」と、消滅を惜しむ声も多い。
現在も中古車市場では、結構良い値段が付けられている人気車だ。終売となってから、より愛されるようになった、少し変わったクルマでもある
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■チャネル統合により終売を迎えたやんちゃ坊主
エスクァイアは兄弟のモデルチェンジで幕を下ろしたが、ビスタ店とネッツ店のチャネル統合で姿を消した1台が、ヤマハチューニングのエンジンを搭載し、イイ排気音を響かせていた、ヴェロッサである。
欧州テイストの個性的なエクステリアデザインに、CPUにまでチューニングの手を伸ばした心臓部は、このクルマに懸けたトヨタの本気度が見て取れる。ただスポーツするだけではなく、カッコよくエキゾチックに走り抜ける。それがヴェロッサの追い求めていた走りであろう。
インテリアはシブく真っ黒に染められているが、鮮やかな赤色照明を纏ったメーター類、アンバーイエローの室内イルミネーションが、このクルマのキャラクターをさらに濃いものとした。
生産されたのは3年にも満たない期間。しかし、市場に与えたインパクトは絶大だった。ドリフトを愛好するユーザーからの支持が根強く、5速MT車は現在も新車当時と変わらない値段で取引されることが多い。
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■角目のランクルといえば彼しかいない!
歴代ランクルの中では、少しマイナーなポジションにいる60系。次代の70系は2023年に復刻して大人気となっているのだが、ランクルの魅力が大いに詰まっているのは、60系だと筆者は考えている。
前後リーフサスで、ランクルの堅牢性をしっかりと持ちつつ、ステーションワゴンとしての使い方もしっかりと提案する乗用車でもあるのだ。つまり、ヘビーデューティーの70とラグジュアリーな100・200・300系の特徴を両方持っている、ランクルということになる。
ただしラグジュアリー感のあるランクルと言っても、300系のようなボディの大きさは無い。乗用系のランクルとしては小さめなボディサイズが、100系が登場した後も、300系が人気の現代でも、変わらぬ支持を集めているのだ。
どこもかしこも四角い、後期型のデザインが60らしいという声も多い。オリジナルのままで乗り続ける人が多いのも、60系を愛するユーザーの特徴であろう。
それぞれのクルマを振り返ってみると、売れる仕掛けではなく愛される仕掛けが随所に見える。真の意味でカーライフを充実させるためには、ユーザーとクルマが相思相愛である必要があるのかもしれない。
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