全国各地で多く開催されるイベントを楽しみに出かける方も多いだろう。鉄道駅の前で開催される以外は概ね活躍するのがバスだ。今回はイベント会場までの移動手段に欠かせないバスを中心にレポートする。
文/写真:東出真
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
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■無料で松阪牛のすき焼き大盤振る舞い!
三重県松阪市の松阪農業公園ベルファームで2024年11月24日に開催された「第73回松阪肉牛共進会、松阪牛まつり」に行ってみた。毎年この時期に開催されているイベントで、予選会を通過した50頭の「特産松阪牛」の中から優秀な松阪牛を選出する品評会である。
松阪肉牛共進会は今年で73回の歴史があるが、それとともに松阪牛について広く知ってもらうために松阪牛まつりというイベントが併催されている。冷え込みの厳しい日だったが、雲ひとつない晴天に恵まれ多くの来場者で賑わった。
まず筆者が真っ先に向かったのが「松阪牛を使用したすき焼き」の振る舞いだ。先着1000人に無料で松阪牛の入ったすき焼きを振る舞うとあって、早朝から多くの人が列を作っていた。早い人は何時間も前から並んでおり、振る舞いが始まるとあっという間になくなったようだ。
筆者も何とかありつけたがm甘辛く煮込んだ野菜と松阪肉はいい味付けでとても美味しかった。 また近くでは朝9時から松阪肉牛共進会が開催されている。一次審査では個体審査を、二次審査では数頭の牛を比較、という審査を繰り返し行い優秀な牛を選出していく。
最後は二次審査で選出した上位10頭ほどの牛を整列させ、その中から優秀賞1席が決められる。お昼頃には式典、表彰式が行われる。
■やはり三重交通が登場する!
次に向かったのはシャトルバス乗り場だ。会場の松阪農業公園ベルファームには駐車場はあるのだが、朝のうちにほぼ満車となってしまう。そこでアクセス方法として、周辺のいくつか場所を借り上げて臨時駐車場を設け、シャトルバスで結ぶほか、松阪駅からのシャトルバスも設定されている。筆者はシャトルバスに乗車してみることとした。
松阪市所有のマイクロバスでは対応しきれないため、三重交通の貸切バスが運行される。シャトルバス乗り場には時刻表などは掲示されておらず、係員の指示で概ね20分間隔で運行されているということだった。まず松阪駅前へ向かうバスに乗車した。さすがに始まったばかりなので、駅行きのバスに乗車する人は少ない。筆者を含めて4人を乗せたバスはベルファームを出発した。
ベルファームを出発したバスはノンストップで松阪駅を目指す。伊勢自動車道松阪インターに向かうために整備されたアクセス道路を順調に走行する。当該区間で渋滞箇所はないので、ストレスは感じない。松阪駅前には約15分ほどで到着した。
降車後に所用を済ませ、再び松阪牛まつりの会場へと戻ることにした。駅を出るとすぐにシャトルバス乗り場が分かるように、看板と案内をする職員が配置されていた。乗り場は駅ロータリーの向かい側にあるバス乗り場だ。
ここはバスツアーの集合場所のほか、ボートレース津に向かうサービスバスの乗り場ともなっている。時刻は11時すぎで、まつりも始まって1時間というタイミングなので、かなり列が出来ているのではないかと思ったが全く人がいない。
筆者がここに来る際に行き違いでバスが出発していったので、うまく人の途切れたところで乗車できたとも思い込み、車内で待機していたが、他に乗客がやってくる気配がない。そのうちにバスの出発時間となり、特設のバス乗り場から動き出した。
もう1人が乗車したが結局、乗客は筆者と含めても2人だった。バスは走ってきたルートを逆にたどりながら走行していく。このルートを通常運行する路線バスはないので、車窓から見る景色も今日しか見ることができない新鮮なものだ。
■本物の松阪牛である証明書も!
戻りは約20分ほどで到着した。まだ始まったばかりなので、会場のベルファームはかなり混雑していた。メインエリアとなる「松阪牛生産地域特産品横丁」には30を超える店舗が並び、松阪牛を使った商品の販売を行っていた。
各ブースには出品紹介というボードが掲げられていて、当該店舗のどの商品に松阪牛がどのように使用されているのかが明記されている。また焼肉などを提供する店舗では、松阪牛の個体識別番号や証明書も掲示してあり正しく本物の松阪牛を購入可能だ。
続いて筆者は焼肉コーナーへ向かった。ここでは松阪牛の焼肉を楽しむことができる。特設された店舗で肉を購入し、テーブルに置かれた七輪で自由に焼いて食べるスタイルだ。各店舗でメニューに違いはあるが、カルビやホルモン、A5サーロインという超高級肉も購入可能だ。店舗の前にはやはり松阪牛個体識別番号が掲示されており、正真正銘の松阪牛であることを示している。
これは以前問題となった狂牛病問題対策として、牛それぞれに割り振られた番号のことで、松阪牛については国のシステムに先駆けて構築された。個体識別番号は10桁の数字で表示されており、インターネットで検索すると誰でも肥育農家名等の情報と、出生地、肥育地、肥育日数など36項目のデータを確認することができる。
辺りは七輪からの煙でいっぱいになっていて、炭火で焼いた肉はとても美味しい。ゆっくりと話しながら、あるいはドリンクやアルコール類を飲みながら、賑やかに焼肉を堪能していた。
■関心の高い競りがスタート!
午後からは第73回松阪肉牛共進会のせり市が行われた。午前の審査で決定した優秀賞1席から5席を含む特産松阪牛50頭を優秀賞1席の牛が最後のせりになるように順番を組み替えて行われる。ちなみにこの「特産松阪牛」というのは定義があり、松阪牛の中でも兵庫県生まれの子牛を松阪牛生産区域内で900日以上肥育した牛のことを指す。
通常より10ヶ月ほど長く肥育するため特別な技術が必要であり、松阪牛全体の数%しか出荷されないので非常に貴重かつ価値の高いものである。最後にせりにかけられる牛の価格は、毎年全国ニュースにもなるので見聞きしたこともあるだろう。
ちなみに過去の最高額は2002年の5000万円だ。今年は「ともみ7」号が歴代5番目となる3032万円で落札された。また筆者が個人的に毎年楽しみにしているのは、松阪肉牛共進会に参加している高校生が育てた牛の落札である。松阪市に隣接する多気町にある相可高校だ。かつては高校生が経営するレストラン「まごの店」が人気となりTVドラマ化されたほどだ。
その相可高校にある生産経済科では松阪牛を肥育しており毎年、高校で育てた牛を出品している。今年は多気町で開催された第57回多気町肉牛共進会に2頭を出品し、うち「わかみのり」が同校として26年ぶりに優秀賞1席を獲得し注目を集めた。
そして今年は「にしき」号が出品され、同校では過去最高となる800万円で落札された。その瞬間、会場は大きな歓声と驚きの声が上がったのは言うまでもない。
■高速車も臨場!
せり市が終わると松阪牛まつりもそろそろ終演だ。店の撤収作業などが始まる特産品横丁を抜けると、臨時バス乗り場で帰りのバスを待つ行列が見える。今回は松阪駅前と中部台運動公園へ向かうバスに三重交通が充当されていた。高速車も運用されていたので会場内を歩き回ったあとなら、確実に着席できるのでありがたい。続々と到着するバスを見送りながら筆者も家路に着いた。
全てのイベントがそうだとは言わないが、地方で開催されるイベントでは駐車場の確保を目的に会場までシャトルバスが運行されていることが多い。そのほとんどは無料なので、行楽シーズンは特にチェックしていただきたい。
当該エリアに路線を持つ事業者のバスでも、普段は運用されない車両が臨時的に充当される等のマニアには貴重なシーンに出会えるかもしれない。イベントを楽しむのはもちろんだが、シャトルバスという一味違った楽しみを見つけてみるのもいいだろう。
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