山本真貴子院長(中央)と談笑する親子連れら=奈良県生駒市小明町で、山口起儀撮影

 産後の母親と乳児が一緒に休息できるカフェを備えた産後ケア施設が5月末、奈良県生駒市に開院した。地元出身の助産師で、現在4歳と1歳の2児を育てる山本真貴子院長(38)が「産後の母親に近い視点を持つ助産師として寄り添いたい」という思いで企画した。カフェを併設する産後ケア施設は県内では珍しい。産後ケアに特化した施設は市内で初めて。【山口起儀】

 築37年の木造2階建ての民家を活用する葉ノ月助産院(同市小明町)。1階のカフェラウンジは畳の上にビーズソファを配置した開放的な空間で、ネスレ日本(神戸市)が無償で設置したコーヒーサーバーで作る「カフェインレス」のコーヒーは、授乳中の人でも安心して飲める。

 栄養価の高いランチも提供され、コーヒーを飲みながら気軽に子育ての相談ができる環境を目指している。2階には大型テレビやベットを備えた個室が3室あり、希望すればスタッフに子どもの面倒をみてもらい、仮眠するなど自由に過ごせる。利用者がどう過ごしたいか要望を聞いて、最適な過ごし方のプランを考える。

ベッドや大型テレビを備えた個室=奈良県生駒市小明町で、山口起儀撮影

 産後ケアは退院後から一定期間、母親を支援する事業で、市町村の委託を受け、助産師が母親と乳児をサポートする。産後のうつや孤立の問題は深刻化している。山本院長も産後に不安定な時期を経験した。「誰かに頼る育児が当たり前の社会にしたい。気軽に訪問し、何でも相談してもらえれば」と笑顔で語る。

 開院日には2組の親子が訪れ、ランチやコーヒーを味わいながら談笑するなど穏やかな時間を過ごしていた。6カ月の長男と訪問した市内の会社員の女性(33)は「地元に施設ができたのがうれしい。同じ年代の子を育てる人が集まるので気を使わなくていい」と満足顔で、生駒市の小紫雅史市長は「産後ケアサービスが当たり前の社会実現に向け、素晴らしい施設ができた」と期待していた。

 当面はデイケア(午前10時~午後5時)のみ。料金は3000円で、市の「産後ケア事業クーポン券」(2500円分が5枚)を使えば1回あたり500円で利用できる。オプションで下半身から体を温める「ヨモギ蒸し」(3000円)などがある。葉ノ月助産院ホームページ。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。