慢性的な赤字運行が問題となっている伊予鉄道(本社・松山市)の人気観光列車「坊っちゃん列車」の先行きに暗雲が垂れこめている。同市が17日まで実施した運行支援のためのクラウドファンディング(CF)は、2500万円の目標額に対し、寄付額は約1割の約280万円にとどまった。市は2024年度中に計2回のCFを実施する計画だが、1回目が不調に終わったため、支援方法について「再検討したい」としている。
坊っちゃん列車は、伊予鉄道が01年から運行を開始。観光コンテンツとして人気を博しているが、同社は人手不足などを理由に23年11月から約5カ月間、運休した。再開に向けた昨年の市との協議で同社は、運行開始から年間約2300万円~1億円の赤字を計上し、23年度末までの累積赤字が約14億円に上ると明らかにした。しかし、継続を求める声なども受け、同社は赤字問題を抱えたまま、乗務員が確保できたとして24年3月に運行を再開した。
同社から公的支援を求められた市は、無料通信アプリLINEで市民らにアンケートを実施するなどして支援策を検討。運行再開を受けて同月、CFによる支援を決定した。また、経済的波及効果に関する調査や公金投入の是非などを市民に問うアンケートを民間会社に委託して実施することも決め、今年度予算などに必要経費(予算額1508万4000円)を計上した。
1回目のCFは、3月20日~6月17日の90日間にわたって実施。同社の年間の運行赤字額を5000万円と見込み、目標額を設定した。寄付額は283万6115円で、達成率は11・3%だった。事務手数料など諸経費として差し引かれる分(寄付額の約2割)は市が負担し、寄付額全額を列車運行に活用するという。市によると、今回の寄付者200人の半数以上が市内在住者だった。今秋以降に予定していた2回目のCFを含む今後の支援については、9月末をめどにまとまる民間会社の調査結果を受けて再検討する計画だ。
市長時代に坊っちゃん列車の運行を推進した中村時広知事は6月の定例会見で、CF実施に要する経費に触れ、「かかった金額でバックアップする方法もあった。(CFが)運行支援として適しているのか、2年目(以降)はどうするのか、議論の余地がある」などと述べ、市の支援方法に疑問を呈した。一方、市は「満額で達成した場合の予算を組んでおり、(寄付額が少なかったことで)当初の予算額より抑えられる可能性が高い。今後も持続的な運行に向けて支援できるよう、伊予鉄道と協議を重ねたい」としている。【広瀬晃子】
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