写真はイメージ=ゲッティ

 北海道内で初夏を感じられるようになったが、公立校でエアコンの設置が進まず、学校関係者が気をもんでいる。昨夏の猛暑を受け、道教育委員会や市町村教委が準備を進めているが、7月末までの整備率は道立校で0・8%、市町村立で19・1%にとどまる見通しだ。当面の措置として用いられるのが工事の不要な「簡易型クーラー」。道立校に限れば夏に全校へ行き渡る予定だが、「教室全体が冷えない」と不安の声も上がる。【金将来】

簡易型、パワーは住宅の「1部屋」分

 21日に札幌市立中央中学校(中央区)の全教室に簡易型クーラーがつけられた。室内機と室外機が一体で工事をせずに設置でき、1時間足らずで作業は終わった。

札幌市立中央中学校に設置される簡易型クーラー=札幌市中央区で2024年6月21日午後4時2分、金将来撮影

 中央中は記録的な猛暑だった昨夏、学校にあった扇風機などをフル稼働させた。体操着による授業の参加を認めるといった対策も講じたが、体調不良を訴える生徒もいた。

 この日に設置された簡易型クーラーは、室内機と室外機を別々に設置する一般的なエアコンと異なり、取り付けが簡単だ。壁に穴を開けて配管を通す工事も必要なく、手軽な暑さ対策として一般家庭でも人気。ただし、住宅の「1部屋」を想定したものが多いため、教室全体をカバーすることは難しい。

 山下敦史教頭(50)は「教室全体を冷やすことは困難。今年も熱中症に十分に気を配って夏を乗り越えたい」と不安を吐露する。

対策急務もハード面で難航

 昨夏は2021年4月の運用開始以来初めて道内全域に「熱中症警戒アラート」が発令された。昨年8月に伊達市の小学校で小学2年の女子児童がグラウンドで体育の授業後に熱中症とみられる症状で亡くなったり、気温を理由に学校が休校になったりと、道内でも学校の暑さ対策が急務になっていた。

 道教委は昨年9月、今夏に向けた対策に着手。11月に道立学校管理規則を改正した。夏と冬休みの総日数を50日から56日に変更し、夏休みの日数を長くできるようにした。また、熱中症対応マニュアルも改訂した。暑さ指数が31度を超えた場合、体育活動や部活動の「原則中止」を徹底することを決め、ソフト面の取り組みを打ち出した。

「エアコン文化」

 一方、ハード面の対策は難航している。道内は「エアコン文化」が定着しておらず、昨夏の猛暑でエアコンの需要が急激に高まった。一般家庭への導入も増えているため、学校のエアコンの設置にあたる人手が足りていない状況だという。道教委の担当者は「人手が需要に追いついていない状況だ」と話す。

 道内の教室数は道立学校が約3500室、市町村立学校は約1万7500室に及び、エアコンの必要数は膨大になる。また、頭を悩ませるのが工事の進め方だ。学校生活に配慮して放課後や休日に工事を進めてほしいという意見もある。一般的に学校にエアコンを設置する際は、設計から工事までに約1~2年がかかるとされる。道内の全校で整備を終える見通しはたっていない。

北海道は今年も暑い

 このような状況を背景に、道教委がエアコンの導入までの当面の措置として進めているのが簡易型クーラーの整備だ。

 冷房設備(簡易型クーラーを含む)の設置率は7月末までに、道立校で100%、市町村立校で78・7%になるという。しかし、簡易型クーラーは冷房効果が限定的なため、小まめな水分補給や冷却グッズの活用などと掛け合わせて対応する必要があるとみている。

 札幌管区気象台によると、今夏も昨夏と同様に平年より気温が高くなることが予想される。道教委の担当者は「日光を遮断したり、扇風機との併用で冷気を教室全体に回らせたりと現場で工夫をお願いしたい。エアコンは整備を急ぎたい」とした。

 教室へのエアコンの設置は、愛知県豊田市立小で18年7月、小学1年の男子児童が熱中症で死亡した事故を受けて急速に進んだ。文部科学省によると、2022年の全国公立小中学校の冷房設備(簡易型クーラーを含む)の設置率は普通教室で95・7%だった。

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