徳島市にキャンパスを構える私立の四国大(徳島市)が2026年4月に「デジタル創生学部」(仮称)を新設する準備を進めている。8日に徳島県庁で記者会見した松重和美学長らによると、文部科学省へ24年度末ごろに学部設置を申請する予定だ。認められれば、学部の新設は09年の看護学部以来となり、5学部体制となる。
新学部は、01年に創設した経営情報学部メディア情報学科(当初は情報学科。1学年定員65人)を母体に発展させる形で、1学年定員100人で設ける。教育界で広がっている「文理融合」の実践型教育を目指す。メディア情報学科は同時に学生募集を停止する。
AI(人工知能)を活用して商品の開発から生産、販売、顧客情報管理などに必要な情報システムを開発できる人材を育てる科目群の他、数理的思考力とデータ活用能力を基に地域の課題解決や新たな価値の創出を目指す科目群、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)、ゲームコンテンツなどを企画・制作する技術などを学ぶ科目群を設ける。また、ドローン操縦の国家資格取得も支援する。
女性の社会進出を後押しするため、定員の4割超は女性としたい考えで、女性の入試枠や奨学金制度などの創設を検討する。具体的な受験科目発表は25年度になるが、高校の文系・理系双方の生徒が受験できるよう検討を進めているという。
松重学長は「養成するのは実践的なデジタル人材、県内で就職・起業する人材だ。こういった分野に関心ある人は、県外に行かなくても学べることを知ってほしい」と話した。
学生は進学した大学のある地域で就職する例も多いことから、徳島で進学・就職してもらい、人口流出を抑えたい狙いもある。このため、大学は卒業後の「受け皿」となる地元企業からも新学部の運営などへの協力を得たい考えだ。松重学長は「地域の活性化に資する人材を供給していくので支援してほしい」と述べた。
社会のニーズ高いデジタル人材養成
情報技術を扱うデジタル人材は、技術の進歩にしたがって、今後さらに不足する可能性が高いとされる。このため、社会が求めるデジタル人材養成を掲げた学部新設の動きが各地の大学で相次いでいる。
四国内の情報系学部としては、高知工科大(高知県香美市)の「情報学群」がある。新設の動きとしては、松山大(松山市)が「情報学部」の25年4月開設を目指している。松山大は23年10月に愛媛県と連携協定を結び、県からの補助金交付やカリキュラムの外部評価委員への県職員の起用、学部生の就職先探しといった協力も得られる予定だ。また、地元企業を中心に金融業、物流業、製造業など幅広い68社・団体を「協力企業・団体」として公表している。大学によると、インターンシップなどで協力を得られる見通しだ。さらに、就任予定の教員16人のうち12人は外部から招く予定で、8月にも見込まれる文科省による認可後、氏名を公表する予定という。
このほか近畿地方でも、神戸大(神戸市)の「システム情報学部」、関西大(大阪府吹田市)の「ビジネスデータサイエンス学部」がいずれも25年4月に開設予定だ。
26年4月の学部設置を目指す四国大は、こういった大学に比べ1年遅い取り組みだが、検討している指導スタッフの面々やカリキュラムなど次第では、「後発の強み」に変えることも可能だ。少子化の中、地方大学が生き残っていけるのか。新学部を含め、社会のニーズに応えた人材養成ができる態勢かをアピールできるかどうかが、今後のカギとなりそうだ。【植松晃一】
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