押す気はないのに、広告を…

マーケティングのリサーチ会社「クロス・マーケティング」が、20代から60代の1100人に、ウェブサイトやアプリを利用している際に感じる不快なことを、複数回答でたずねました。

すると、最も多かったのは『広告が表示され、押す気はないのに誤って押してしまった(押しそうになった)』で、29.5%、およそ3割にのぼりました。

続いて、『初期状態でメルマガを「受け取る」になっていて、いちいち外す必要があった』が、25.3%。

『サービスを解約しようと思っても、解約ページが見つけにくい』が、24.9%。

このほか、『急に不快な画像や苦手な画像の広告が表示された』『人前で、音が出る広告を間違って押してしまった』など、広告に関するものが上位を占めました。

また、インターネット広告に関する別の調査でも、不快に感じるものとして『消せない広告、閉じにくい広告』が最も多く、およそ半数の人が挙げ、『画面全体に表示される』『別画面やポップアップで自動的に表示される』もおよそ4割が挙げていました(マイボイスコム調べ)。

それって、ダークパターン?

「広告を誤って押してしまったのは、ダークパターンに誘導されたからかもしれません」

そう話すのは、ウェブデザインに詳しい、仲野佑希さんです。

「ダークパターン」とは、消費者が気付かないうちに不利な判断に誘導するデザインで、今、世界で問題になっています。

仲野さんによると、より巧妙なダークパターンを使う広告のデザインが増えていて、特に、以下のようなものがよく見られるといいます。

1: 操作ミスを誘うもの

広告を消すための×マークが小さかったり、ウェブサイトの「次ページに進む」ボタンのすぐ近くに広告が置かれていたりして、操作ミスで広告を押してしまうものです。

また、ページを開いてすぐには広告が表示されず、画面をスクロールしようとしたタイミングで急に画面中央に現れて誤って押してしまうものも、意図的にデザインされている可能性があります。

2: デザインを偽装したもの

ウェブサイトやアプリのデザインを偽装することで、誤って押してしまうものです。

例えば、SNSのメッセージ一覧に、新着メッセージに似たデザインの広告を掲載すると、ユーザーが勘違いして押してしまうことがあります。

3: 誤って触ってしまうもの

広告の中に、「髪の毛」や「汚れ」のようなデザインを入れ込むことで、ユーザーがスマホの画面に付着していると思い、誤って触ってしまうものもあります。

4: ×マークが見つかりづらいもの

「広告を誤って押してしまう」だけではなく、「広告をなかなか閉じることができない」というダークパターンもあります。

たとえば、×マークの色が背景の色と同じため、なかなか見つけることができないといったものがあります。

消費者庁は、ダークパターンについて、「悪質なケースに関しては取り締まりを強化している」とする一方、「定義が固まっておらず、包括的に規制することは難しい」としています。

仲野さんは、上記のような事例は、一部のプラットフォームでは規制の動きがあるものの、多くの広告で使われているのが現状だと指摘しています。

ダークパターンに誘導されないためには

では、こうしたダークパターンを使った広告を誤って押してしまわないためには、どうすればいいのでしょうか。

仲野さんは、次のような心構えを持ってほしいと話します。

1: 事前にダークパターンの種類を知っておく
上記のような、よく使われているダークパターンの種類を知っておくことで、どういったデザインに注意すべきか認識することができ、身を守ることにつながります。

2: ウェブサイトのコンテンツはすべて広告かも知れないと疑う
広告は、巧みに、ウェブサイトに溶け込むようにデザインされていることが多いので、すべてのコンテンツが広告ではないかと疑ってかかる姿勢が大切です。

3: 簡単にタップしない
タップすると、知らず知らずのうちに別のサイトに飛んでしまったり、意図しないファイルをダウンロードしてしまったりする可能性もあります。
ウェブサイトを利用している際、タップしようと思った場合は、ひと呼吸、置くことが大切です。

私たちがウェブサイトやアプリを無料で利用できるのは広告があるからだとも言えます。

ですが、意図しないうちに広告サイトに飛ばすような悪意ある「ダークパターン」からはしっかりと、身を守ることが必要です。

ダークパターンについて、引き続き情報発信をしていきます。

皆さんの経験をぜひ、お寄せ下さい。

NHKニュースポスト

皆さんの情報や疑問をきっかけに調査報道を展開するための情報提供窓口です。皆さんからの情報をお待ちしています。

4月3日「クローズアップ現代」で放送

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。