狩りで捕らえた野生の鳥獣肉を指す「ジビエ」。健康志向の高まりなどから注目される高級食材を気軽に味わってもらおうと、岐阜市の飲食店運営会社「ひょうたん姉妹」が鹿もも肉の缶詰の製造・販売を始めた。ターゲットとする顧客層は、キャンパーらアウトドア愛好家だ。
「GIBIER CAMPUS(ジビエ キャンプ)」は130グラムで税込み1500円。缶詰としては高価な部類に入るが、岐阜県郡上市の猟師が仕留めた鹿を現地で素早く処理し、肉の新鮮さを際立たせた。その後、自社ビルの加工場で塩漬けした上で、スパイスのクミンを加えている。
常温でそのまま食べられるが、ステーキにしてもおいしいという。三宅智子料理長(35)は「脂肪分が少なく淡泊な味わいだが、たんぱく質が豊富。ステーキにして、バルサミコ酢など味が濃いめのソースを合わせて」とアドバイスする。
山の恵みが詰まったジビエのうまみはそのままに、保存性や携帯性を高めたのが缶詰の強み。「ぜひキャンプに持っていって、気軽に味わってほしい」と笑う。将来的には、ジビエ缶詰を起爆剤に「岐阜県内のキャンプの裾野を広げられたらいい」と意欲を見せる。
三宅さんは栄養士や調理師の資格を持つ姉と一緒に、2005年から岐阜市内で海鮮居酒屋を営んでいた。08年、JR岐阜駅に近い繁華街の同市玉宮町に移転する形で郷土料理店「おせん」を開業。自社ビルの1階はテナントに貸し、2、3階を店舗、4階をジビエ加工場とした。
おせんは「地元食材にこだわる小料理屋」をコンセプトとし、ジビエを看板メニューに据える。鹿肉料理の一番人気は、低温調理でじっくり火入れした「レバ刺し」で、濃厚な味わいが評判だ。
猟師はジビエ料理の品質に厳しく、「『あの店の肉はダメ』と批判するのをしばしば聞く」という。ジビエのプロや客の舌を満足させるべく、緊張感を持って日々、仕事に取り組んでいる。
缶詰は、コロナ禍を経てネット通販に着手する中で商品化された。ポストコロナ時代に対応する中小企業向けの国の「事業再構築補助金」を活用し、缶詰製造の関連機器を整備した。
5月にはジビエ缶詰の第2弾として、イノシシ肉のスープカレー(200グラム、税込み1500円)を発売する予定。「岐阜の豊かな自然で育ったジビエの魅力をこの缶詰で体感してほしい」【太田圭介】
◇
「ひょうたん姉妹」が運営する「おせん」では、地元食材を生かした旬の料理のほか、イノシシ肉を使ったぼたん鍋などのジビエ料理も人気。会社全体の従業員は15人(うち正社員3人)で全員が女性。夜に働けない主婦らに配慮し、「おせん」はランチタイムも営業する。子育て中の女性が働きやすいように「今後、職場に託児所を作りたい」と三宅さんは話す。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。