脱毛が若い女性だけでなく幅広い層に定着してきた。価値観の変化に加え、介護を受ける場合に備える人もいる。ただ脱毛施術を受けても思うようにいかない例はある。手法による違いや注意点を専門家に聞いた。

夏はムダ毛処理を頻繁にする人も多いだろう。自分で処理する場合、電気シェーバーやカミソリ、除毛クリームなどが使われる。ただ肌に負担がかかるやり方ではトラブルが起きやすい。乾燥した肌にカミソリを当てた、シェーバーに雑菌が付着していた、処理後に肌の保湿をしなかった――。肌の赤みやかゆみ、かぶれが生じることもある。

亀田総合病院(千葉県鴨川市)皮膚科部長の田中厚医師は不適切な処理を繰り返した結果として「広範囲の接触皮膚炎や黒ずみなどの色素沈着、多発性毛のう炎が生じ、医療機関を受診する人も珍しくない」と警鐘を鳴らす。

医療機関かエステティックサロンか

脱毛施術を考える場合、医療機関が手掛ける医療脱毛と、エステティックサロンなどでの美容脱毛では方法が異なるのを知っておきたい。

医療脱毛には大きく分けてレーザー脱毛とニードル脱毛とがある。広く扱われているのはレーザー脱毛だ。毛の根元の黒い色素(メラニン)がある部分にレーザーを照射。約200度にもなる高熱で発毛組織を壊し、そこから生えてこないようにする仕組みだ。ニードル脱毛は毛穴に針を刺して電流を流して発毛組織を壊す。ともに医師や指示を受けた看護師が施術する。

エステティックサロンなどでの脱毛は光脱毛とも呼ばれ、レーザーより低出力の光を照射する。100度前後で発毛組織にダメージを与え、発毛を抑える。基本的に発毛組織を破壊するには至らないので、医療脱毛に比べ頻繁に施術を受けることになる。しかし照射で生じる熱が低くなる分、施術時の痛みは比較的少ない。

毛の成長期に施術

施術は毛の生え始めから抜け落ちるまでの「毛周期」のうち、毛の成長期でメラニンが一番濃くなるタイミングを狙う。田中医師によると、「体の部位によって若干違うものの、成長期の毛は全体の5分の1程度」なので、施術は5回以上受けることになる。

2カ月おきにレーザーや光の照射を受けるのが一般的なようだ。ただし対象となる部位などによっても変わる。

効果が薄れるケースも

レーザーも光もメラニンに反応するため、白髪や金髪など色の薄い毛では脱毛効果が薄れる。日焼けした肌などはやけどの危険性があり、高出力のレーザーや光は当てられない。ただし光脱毛のうち「蓄熱式脱毛」と呼ぶ方法は照射時の温度が70度前後と比較的低く、日焼けした肌や産毛でも施術が可能とされる。ただし施術回数が多くなるという。ニードル脱毛も産毛などに対応できるという。

事前にしっかり説明を受けて

脱毛施術を受けるところを選ぶ際、注意すべき点はどこか。料金はもちろんだが、施術法や回数など事前にしっかりと説明を受けて情報を得るのが大前提になる。時としてやけどなどのトラブルも起こりうる。東京医科大学(東京・新宿)皮膚科客員教授の乃木田俊辰医師は「脱毛に向かない肌の状態やリスクの話まで、丁寧に説明する医院やサロンを選ぶのが望ましい」と助言する。

脱毛機器の開発にも携わる倉敷芸術科学大学(岡山県倉敷市)生命科学部の楢村友隆准教授は「同じ機器を導入していても、施術者の技量によって脱毛効果が変わることもある」と話す。施術を受けた人の話が参考になる。

費用は施術を受けるところによって異なる。医療脱毛でも基本的に保険適用はされず自由診療になる。脱毛の部位や程度、期間など希望を明確にし、施術先の情報を見比べて判断したい。

(ライター 仲尾 匡代)

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