「近頃の、ニッポンの男性は元気がない」

そう感じている精神科医・和田秀樹さんと生物学者・池田清彦さんが共著『オスの本懐』(新潮社新書)で対談した。本書のテーマは「オスがオスであるために」。

「おじいさん」「老人」かどうかは自分ではなく他人が決める部分が大きいと話す2人が、オスがオスらしく生き、老いるためにどうあるべきか、本音の語り合いを一部抜粋・再編集して紹介する。

今の70歳は昔の70歳と違う

和田秀樹(以下、和田)
本来、ヒトの生物としての寿命は38歳くらい。アラフォー以降は「オマケの人生」だから楽しく生きたほうがいい、と著書の中で書かれていましたね。

池田清彦(以下、池田):
子どもを育てているうちは、自立するまでやりたいこともいろいろと我慢して生きなければならないのが現実だけど、子どもたちが巣立った後は我慢はやめて自分勝手に楽しいことを探して生きたらいい、そういう話だね。

老いてようやく自由になる!好き勝手に生きていい(画像:イメージ)
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和田:
まったく同感です。老いてようやく自由に生きられるのに、まだ我慢して生きている人が多すぎる。「オマケの人生」だと割り切って、もっと好き勝手に生きていいはずです。

池田:
70歳なんて今の超高齢社会ではまだまだ若いほうでしょ。そんなに年寄り臭くなることはないですよね。

和田:
今の70歳は昔の70歳とまったく違います。

映画『砂の器』の中で加藤嘉さんが演じた老人、前に観た時はずいぶんおじいさんだなと思いましたが、調べてみると当時61歳。今の私の年齢よりも下です(笑)。

「おじいさん」は誰が決めるか

池田:
確かに、今の70歳は昔の感覚では55歳ぐらいかな。そもそも「おじいさん」かどうかは自分ではなくて他人が勝手に決める部分もある。

童謡の「船頭さん」に「今年60のおじいさん」という歌詞があって、60歳の船頭が船を漕ぐ時だけは元気になるという歌でね。

養老(孟司)さんが60歳になった時、数人でベトナムに虫採りに行って「裏の畑の養老さんは今年60のおじいさん。歳をとっても虫採る時は元気いっぱい網を振る」なんて歌っていたけど、誰も養老さんを老人とは思ってなかったな。

和田:
昔は55歳で定年退職する社会でしたから、60歳というだけで、とうに第一線から引退した「おじいさん」と決めつけられることは多かったでしょうね。

池田:
僕の伯父さんも55歳で定年になって、やることないから毎日釣りに行ってたな。

和田:
今なら現役でバリバリ働ける年齢の人が自動的に仕事を奪われていたのは、ある意味、気の毒ですね。

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