新生活が始まるこの季節、慣れない日々に家の中を整える余裕がない人も多いはずだ。
子育て中の家庭では、リビングや子ども部屋に散らかったおもちゃにストレスを感じる人もいるだろう。
「大人が片づけたほうが早い」と取り掛かるものの、子どもに片づけ習慣が身につかないのでは?と思うと手が止まる。どうすればよいのか。
現役保育士で育児アドバイザーの、てぃ先生は、大人も面倒に感じがちな片づけだからこそ「面白い!」と思ってもらうことが大事だと話す。
まずは大きな箱1つに放り込む
片づけは、大人にとっても面倒だ。片づけに慣れない子どもならなおさらだろう。
だからこそ、てぃ先生は「片づけのハードルをできるだけ低くして、とにかく自信を持ってもらうことが第一歩です」と力説する。
この記事の画像(5枚)「まずは、大きめの箱を1個用意して『床に置いてあるおもちゃを全部ここに入れてみよう!』という方法から始めてみてください。カテゴリー分けもしなくてもいい。とにかくその箱に入れればOKというルールなので実行しやすいはずです」
箱に全部入ったら「片づけできたね!」と声をかける。
「この方法は1、2歳の子どもに対してはもちろん、小中学生でも使えるやり方です。ある程度、自分で分けることができる発達段階であっても、まずはここから始めてください」と、てぃ先生。
達成することで、子どもは「片づけ=簡単」と認識するようになる。
そして、達成したことを親から認めてもらうことで、「自分は片づけができる」と自信を持つのだという。
カテゴリーを分けて収納したい場合は、箱1個に放り込んだ後に、大人が代わりに行う。
その理由は、通常3歳未満の子どもにとって、カテゴリー分けは困難だからだ。
てぃ先生も「いきなりハードルの高い片づけをするのは、補助輪なしで初めから自転車に乗るのと同じです」と指摘する。
例えば2歳の子どもにカテゴリー別の収納ボックスを用意するなど、発達段階に合わない片づけを行うと、「片づけ=面倒、難しい」と感じてうまくいきづらい。
箱1個の片づけを楽々できるようになって、さらにカテゴリー分けが行える発達段階ならば「カゴに写真を貼るなどして分類を教えるといいでしょう」と、てぃ先生。
言葉だけで「この箱には車を入れてね」などと伝えても子どもはなかなか覚えられない。視覚的にアプローチするのが効果的だ。
片づけを「面白く」する、こんな工夫
いざハードルを下げて「箱1個におもちゃを全部、片づけよう」と提案しても、子どもがのってこない場合もあるだろう。
その対処法として、てぃ先生が提案するのは、片づけを「遊び」に変えて、子どものモチベーションを高めるアイデアだ。
「まず風呂敷を広げて、その上におもちゃを置きます。布の両端をお子さんと親御さんで持って、落とさないように気をつけながら『よいしょ、よいしょ』って箱まで運ぶ。そんなゲームを提案してみるのはどうでしょう」
大人にとってそれは、時間のかかる非効率な行為だろう。
でも子どもの目には「面白い遊び」と映り、結果として片づけがはかどることがある。
風呂敷を使う方法以外では、箱に紐をつけて電車に見立て、「出発進行!」と声をかけ、子どもに運転してもらいながらおもちゃを回収する遊びもある。子どもに合わせて試してみよう。
コミュニケーションの工夫を積み重ねる
「考え方のポイントは『どうやって子どもに片づけさせよう』じゃなく、『どうしたら片づけが楽しくなるか』です」とてぃ先生。
「子どもとしては片づけている、というより楽しく遊んでいるつもりなのです。で、最後に親御さんから『片付けできたね!』と褒められたら、もうお子さんにとっては『片づけ=楽しい』に変わるのではないでしょうか」
入口としてはハードルを下げつつ、遊びの要素を加えるなど工夫を積み重ねる。
これによって子どもの片づけへのネガティブな印象を薄めていく。それが結果として、子どもが片づける力を育む助けになるはずだ。
てぃ先生
現役の保育士でありながら、フォロワーが180万人を超えるインフルエンサーとして活躍。その専門性を生かし、子育ての楽しさや子どもへの向き合い方などをメディアなどで発信している。著書は『子どもに伝わるスゴ技大全 カリスマ保育士てぃ先生の子育てで困ったら、これやってみ!』『子どもにもっと伝わるスゴ技大全 カリスマ保育士てぃ先生の子育てのみんなの悩み、お助け中!』(ともにダイヤモンド社)など多数。
取材・文=高木さおり(sand)
イラスト=さいとうひさし
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