睡眠中の脳波測定のイメージ。東芝社員の協力で睡眠データを集め不眠症の改善などに生かす

筑波大学発スタートアップで睡眠研究のS'UIMIN(スイミン、東京・渋谷)は21日、東芝と共同研究を始めると発表した。社員5000人が協力して眠っている間の脳波などをビッグデータとして収集。睡眠に関わる遺伝子を特定し、寝不足が招く健康リスクの予測法を確立する。

同意した東芝の社員がスイミンの開発した脳波測定装置を着けて眠り、5晩分のデータを収集。個々のゲノムデータや過去10年以上の健康診断によるヘルスデータを組み合わせてビッグデータを構築する。

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)が持つ神経科学や医学的知見を組み合わせてデータを解析し、睡眠の量や質の個人差に影響する遺伝子を解明。遺伝子の違いと睡眠不足による心身の不調(睡眠負債)、慢性疾患の罹患(りかん)リスクや生産性低下との因果関係を探る。

IIIS機構長でスイミン社長の柳沢正史・筑波大教授は「睡眠負債は肥満や認知症などの原因にもなる」と指摘。「研究を通じて個人の罹患リスクを定量的に予測する手法を確立したい」という。研究期間は2026年3月まで。

不眠症は成人の3〜4割が悩むとされる。経済協力開発機構(OECD)の21年の報告によると日本人の睡眠時間は主な加盟国の平均より約1時間短く最下位。不眠による仕事の能率低下や病気による日本の経済損失は25年に18兆円規模との予測もあり社会課題になっている。

柳沢教授は睡眠研究でノーベル生理学・医学賞の有力候補。睡眠と覚醒の切り替えをつかさどるホルモン「オレキシン」を発見し、不眠症薬開発につながった。

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