厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館=東京・霞が関で、竹内紀臣撮影

 患者にわいせつな行為を働くなどした医師に対する行政処分について、厚生労働省の医道審議会が基準作りに向けて検討したものの、結論が出ないまま議論を打ち切っていたことが分かった。刑事罰が確定しなくても行政処分を出せるよう求める声があったが、検討は宙に浮いている。

 医師法や歯科医師法では、医師や歯科医師に対する行政処分の対象を、「罰金以上の刑に処せられた者」や「医事に関し犯罪または不正の行為」、「医師として品位を損する行為」があった場合と定められている。

 処分は、医道審の結果を踏まえて厚労相が決定する。医道審は年3回ほど開かれ、免許の取り消し▽3年以内の医業・歯科医業の停止(業務停止)▽戒告――の三つの処分がある。厚労省が公表している近年の処分事例は、刑事罰を受けたか、診療報酬の不正請求をした医師が大半だ。

 厚労省によると、「品位を損する行為」での処分は過去に3人しかいない。基準が明確でないことが背景にある。このため、わいせつ行為などが発覚しても、被害者と示談が成立し不起訴となった場合には、行政処分がされずに診療を続ける資格はある。

 厚労省は2021年から医道審で、基準作りを目指し、品位の定義などについての議論を始めた。だが医道審は24年2月、「引き続き厚労省で議論を」との報告書をまとめ、実質的に議論を打ち切った。厚労省内で基準作りに向けた動きは止まっている状態だ。【松本光樹】

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