島根・松江市には、25年ほど前に閉店した“伝説のうどん店”があった。名物は“やわらかすぎる”うどん。「ぐじゅぐじゅうどん」などと呼ばれ愛されたうどんが2024年12月に蘇ったと話題になっている。
見た目は普通な“伝説のうどん”
2024年12月、松江市向島町にオープンした「想ひ出noふらた屋」。
この記事の画像(13枚)ここで出されているのが、25年ほど前まで営業していた“伝説”の店「平田屋」のうどんだ。
黄金色の関西風のだし、刻んだ揚げがそのだしがしっかり含んでいる。そこにネギとかまぼこ、たっぷりののりがトッピングされている。
見た目は普通のうどんだが、東京から訪れたという客は「東京で食べるうどんよりやわらかく、胃にやさしい」と感じたそうだ。また、新しい店がオープンしたと聞いてやってきた地元客は「懐かしい味でおいしい」と満足げだ。
食リポ泣かせの“やわらかすぎる”麺
取材に訪れたTSKさんいん中央テレビの嶋村采音アナウンサーが早速、「食リポ」を始めたが、箸で麺をつまむことができない。麺がやわらかく、プチプチと切れてしまうのだ。
これがこの店のうどんの最大の特徴で、コシがなく“やわらかすぎる”麺は、市民から「ぐじゅぐじゅうどん」「ふにゃふにゃうどん」と呼ばれ愛された平田屋のうどんを再現している。
知人から「歯がなくても食べられる」と評判を聞いていたという客は、どれだけやわらかいのか実際に食べて確かめ、評判通りだと納得していた。
破格の安さで「ソウルフード」に
この“やわらかすぎる”うどんを出していた平田屋は、25年ほど前まで松江城のお堀端に店を構えていた。
平田屋が営業していた1998年に情報番組「週刊・ヤッホー!」で取材した時の映像が、TSKさんいん中央テレビに残されている。当時のリポーターのすやまとしおさんが驚いたのは、1杯350円という値段だ。
「つるんつるん切れちゃう」と“やわらかすぎる”うどんの食感を表現し、店主と奥さんの人柄も人気の秘密だと伝えていた。
1杯350円は25年前でも破格の安さだ。店主夫妻の人柄がにじむ温かな店の雰囲気も相まって、昼どきには大勢の客が訪れ、店の近くにある松江北高校の生徒からは「ソウルフード」として親しまれていたという。
箸の長さまで忠実に再現
平田屋の大ファンだった母からなつかしい味を教えてもらい、その味を多くの人に楽しんでほしいと“伝説のうどん”の再現に挑んだのが、想ひ出noふらた屋の店長である高橋涼奈さん(※高ははしごだか)だ。
出雲地方では「平田」が「ふらた」となまって発音されるのをそのまま店の名前にした。
味については、平田屋と同じようにやわらかいうどんを出している松江市美保関町の「そば吉」のレシピを教えてもらい参考にし、再現した。
さらに平田屋で使われていた箸が一般的な割り箸に比べて短かったと聞き、同じものを探して店で使うなど、伝説のうどんを限りなく忠実に再現することを目指した。
子どもは無料!ユニークな助け合い
しかし、どうしても再現できなかったのが値段だ。1杯750円と、当時の「平田屋」の2倍以上になってしまった。
それでも昔なつかしい味を多くの子どもたちにも知ってほしいと、高橋さんは「みらいチケット」の仕組みを取り入れた。
購入したチケットを店内のボードに貼りつけておき、来店した高校生以下の子どもがそのチケットを使って、無料で1杯食べることができる。
子どもたちが知らない誰かにうどんをごちそうしてもらう、ユニークな助け合いだ。
味覚を通じて街の記憶を未来につなぐ。
復活した“伝説のうどん”には、高橋さんのそんな思いも込められていた。
(TSKさんいん中央テレビ)
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