2019年の参院選広島選挙区で地元議員など100人に計約2900万円を配ったとして、公職選挙法違反(加重買収など)の罪で実刑判決を受けた河井克行元法務大臣が、東京拘置所も含めた1160日の獄中体験を語った。
【映像】「おい!」刑務官の高圧的な態度(再現映像)
河井氏は「刑務所施設の秩序維持が大事で、受刑者の更生は二の次。一度実刑を食らうとアリ地獄。更生なんかできない」と語る。2021年10月、収監されたのは栃木県さくら市にある喜連川社会復帰促進センターだ。
最初の1ヶ月は毎日折り鶴を折らされたという。上手く折れた鶴は会社が買い取ってくれるそうだが、最初は一羽も売り物にならなかった。その後、配属されたのは、図書計算工場だった。差し入れられた本のチェックや刊本の貸し出しなどを管理する仕事だ。
月曜から木曜までは作業があり、夕食が終わる17時過ぎから21時の滅灯までは自由時間。金曜日は矯正指導日で「カンブリア宮殿」や「ガイアの夜明け」など録画された視聴覚教材を見ることや、自分の過去を振り返って作文を書くことなど自主学習が義務付けられている。
土日祝は自由時間で、河井氏はこの時間を読書や勉強など学びの時間にあてた。「妻や知人に本を大量に差し入れてもらい、とにかく本をむさぼり読んだ。他の受刑者たちはすることがないから、自由時間は布団で寝ていた。私は刑務所に2年1カ月いて自由時間に布団で休んだことはない」。
一方で、刑務所は更生施設というが現実は違っていた。耳につくほど真っ直ぐに手を挙げて「交談願います」と言い、担当刑務官の許可を得てようやく隣の作業員と会話ができる。その最たる例がトイレだった。「2819番河井、用便に行っていいでしょうか?」などと申し出て、刑務官が口内や衣服などを入念にチェックし許可を得た後で行くことが可能となる。 ほかにも、ロッカーの使用や移動、電気使用、水道使用などさまざまなことに挙手と許可が必要だった。
「作業中に目が泳いでいた」「隊列のときのかかとの向きが違っている」などちょっとしたことで刑務官から怒鳴られる日々。河井氏はそんな刑務官を見て自分の過去を初めて恥じたという。
そんな中、絶対服従の受刑者に対し高圧的な態度をとる刑務官もいたそう。河井氏は検察に踏み込まれた際に半月板を損傷し、歩くのにサポーターが必要だったため、医師に診断書を出してもらっていたが、刑務官に没収され、行進訓練を強行し激痛に耐え続けた。
また、目の持病(薬の副作用)のため逆さまつげが酷く、医師に切ってもらおうとしたが、「そんなこと聞いたことない。まつ毛を切ることはできない」と言われ、結局、自らまつ毛をむしり取るしかなかった。
「学校を出たての若者が刑務官になった途端、受刑者から『先生』と呼ばれ、常に敬語を用いられる。些細なことでも注意されまいと、受刑者は『先生』にびくびくし、その号令に従う。刑務官の方も立場上、受刑者の名前を呼び捨てにし、ぞんざいな口調で対応する。経験の浅い刑務官が、その特殊な関係性を履き違えてしまえば、囚人を自分の家来か下僕くらいに思ってしまうことだろう」(河井氏)
2023年1月刑務所内で突如としてコロナが猛威を振るい、正月明けに河井氏も感染し、隔離病室に移された。そこは乾燥がひどく、外はマイナス5度の凍てつく寒さ。体をガタガタ震わせ、鼻水が食事に落下することもあった。入浴も禁じられ、タオルをお湯で濡らし体を拭くのみ。衣類にウイルスが付着している可能性があるため、洗濯もしてもらえず10日間も同じ下着だった。河井氏は隔離病棟で人知れず風邪をひいたという。
継続して読書を続けながらも、妻のすすめで約4000語もの英単語を覚え直した。安倍総理の名を受けて世界中を飛び回っていたときよりも、英語力は上達したという。そして一番力を入れていたのが、月刊誌「Hanada」の連載執筆で、後に『獄中日記』というタイトルで出版される河井氏渾身の手記だった。何度も書き直し、最終の清書にたどり着く頃には親指が曲がらないほど痛みと熱を発していた。やがて大きなペンダコとなり、その痛みは塀の外に出るまで続いたそうだ。
法務大臣の頃は刑務所内の実態など何も知らなかったという河井氏。受刑者として塀の中の実態を知り、新たな気づきがたくさんあったという。「受刑者は塀の中の生活に適応しようとすればするほど、刑務所が人生の舞台だと錯覚してしまう。私はそれを『受刑者脳』と呼んでいる」。
河井氏は当時を振り返って「薬の副作用で逆さまつげがものすごく伸びてしまうところ、医師に『聞いたことない。切らない』と言われ、『寝ているときも痛いのでお願いだから切ってくれ』と言ったが、『これ以上言うと懲罰房行きだ』と言われてしまい…。本当にあのときは一番情けない思いをした」と語った。
さらに、高齢の受刑者が行進訓練をしていたときの様子を紹介して「どうしても調子が合わなかったときに、『お前、なんで俺の言っていることがわからないんだ!』と刑務官が耐えかねて怒鳴った。この人はわからないことがわからないのに、なぜわからないんだと言われてもわからないだろうと思った」としつつ「自分も今までスタッフや秘書に同じような言葉を浴びせたことがあったなと思って、いけなかったなと」と過去の行いを反省したことを明かした。
また、刑務所内でのトイレのルールも厳しかったとして「同じ工場の人が(入所して最初に行く)新入訓練工場へ行き、そこで高齢の人が大きい方を漏らしてしまったのを現場で見たと言っていて、みんなで『それはひどい』『可哀想だ』と言っていた」と説明した。
コロナ感染時の対応もひどく、隔離病棟で寒さのあまり風邪をひいたという河井氏は「仲間の国会議員が来たときに(状況を説明すると)、『河井ちゃん、それは人権侵害だよ』と。ただ、そういうことを考えることすらできなくなった」と刑務所内の過酷さを語った。
河井氏は、刑務所での経験を通して「受刑する目的は2つ」だとして「1つは本当に反省しているのか。悔悟の気持ちを持ち、繰り返さないと決意しているのか。もう1つは、社会に復帰した後、社会生活を営んでいくための能力、力を養うこと。残念ながら2つとも、あの中では十分に作ることができない環境だ」と指摘した。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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