全身の筋力が低下する難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」を患う男性(48)が埼玉県吉川市に対し、障害者総合支援法に基づく重度訪問介護を24時間態勢で給付することなどを求めた訴訟の判決が8日、さいたま地裁(田中秀幸裁判長)であった。田中裁判長は、男性側の訴えを一部認め、市に1日当たり約19時間の給付と損害賠償など約138万円の支払いを命じた。
原告側代理人によると、男性は2015年にALSと診断された。介護を担う妻の負担が大きかったため19年ごろから24時間態勢の訪問介護の給付を求めたが、市は1日約13時間しか認めなかった。
男性は20年に妻と離婚し県内の別の自治体に転居。現在の居住地では十分な介護サービスが受けられているが、本来は吉川市も24時間態勢の給付を認めるべきだったとして、自らが負担した費用の支払いや慰謝料などを求めて21年に提訴した。
判決では「男性の妻が家事や子どもの世話のため男性の支援に充てる時間が少なくなっていたことは自明。人工呼吸器の装着やたん吸引などの手厚い介護を要する状態で、妻の負担は深刻だった」と指摘。当時の妻にとって介護が過度な負担かどうかの検討を怠っていたとして、市の過失を認めた。
また、19年4月に行われた給付申請の調査で、男性が質問に文字盤を使って回答したところ、市職員が「時間稼ぎですか」と発言したことについて「あまりにも軽率な執務態度と評価されてもやむを得ない誹謗(ひぼう)中傷的な発言」と指摘。男性が負担した介護費用の一部と慰謝料計約138万円の支払いを市に命じた。
原告側の藤岡毅弁護士は「生活実態を考慮して行政が判断すべきだとした判決。障害者の救いになる」と話した。市は「判決文を見ておらず、コメントは差し控える」とした。【加藤佑輔】
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