先月、行われた東京15区の衆議院補欠選挙で演説を妨害したなどの疑いで、警視庁は13日、政治団体『つばさの党』の本部などに家宅捜索に入りました。


■演説中止に追い込まれた陣営も

立憲民主党の陣営
「青脱いでください。『つばさ』が来てるので、青脱いでもらっていいですか」

そそくさと脱いだそろいのジャンパーを目立たないように隠す、立憲陣営。

立憲民主党の陣営
「隠れてた方がいい。ターゲットにされるぞ」

警戒するのは『つばさの党』の動きです。選挙カーが過ぎ去ったのを確認して、再び演説の準備を始めます。しかし…。

つばさの党 黒川敦彦代表
「立憲・酒井さん質問があります。消費税上げるんですか」

男性
「選挙妨害するな。演説中なんだからさ」

つばさの党 黒川敦彦代表
「俺らも演説中。俺らも演説中ですよ。立憲民主党は消費税上げますか。消費税上げることを隠してますか」

立憲民主党 小川淳也衆院議員
「私たちも自ら退路を断って企業・団体献金の全面禁止。政治資金パーティーの廃止…」

つばさの党 黒川敦彦代表
「消費税上げますか下げますか。答えてください」

演説会は即座に中止されました。

立憲民主党 小川淳也衆院議員
「さすがに気が散るわ。これを取り締まれない公職選挙法ってどうなのかね」


■異例の強制捜査も…「表現の自由」

そして13日、つばさの党の本部などに公職選挙法違反の疑いで家宅捜索が入りました。黒川敦彦代表(45)と、候補者の根本良輔幹事長(29)ら3人は他陣営の演説を妨害したり、選挙カーを長時間追い掛けたりした疑いが持たれています。

つばさの党 黒川敦彦代表
「我々は表現の自由の中で適法なことをやっていると理解している。(Q.他の候補者の前で大きな声は続ける)変わらず続けていく予定です」


■事前告知なしでの選挙戦も…

東京15区の補欠選挙では各陣営が対応に追われていました。Youtubeでライブ配信をしながら他の候補者を探して選挙区内を回るつばさの党。各陣営は、その様子をスマホで確認しながら動いていました。候補者を選挙カーに乗せると見つかる恐れがあるため、別の移動手段を用意するケースも…。

立憲陣営
「乗ってる時に絡まれたこともある。街宣していて戦々恐々としながら遊説することは今までなかった」

最大の対策は、街頭演説の事前告知をしないこと。

日本維新の会 柳ヶ瀬裕文総務会長
「ここでやると思うので。交差点でやるか」

それでも防ぐのは容易ではありません。

つばさの党
「ゴミしかいないんだよゴミ。ゴミの周りにはゴミしか集まらないんだよ」

つばさ党は、有権者が聞きたい質問を自分たちが候補者に投げかけているというスタンスです。

つばさの党
「バカ女」

選挙活動を中断して候補者自身が対応することもありました。

日本維新の会 金澤結衣候補(当時)
「この状況でどうやって議論するの。迷惑かかってる。演説中なんですよ。ちゃんと連絡くれれば」


■他候補の演説に“乱入”でもみ合い

無所属・乙武洋匡候補に対しても、揶揄するプラカードを本人の目の前で掲げます。スタッフも止めに入りますが、もみ合いは30分に及びました。応援に駆け付けた国会議員はどのように感じたのか。

国民民主党 伊藤孝恵参院議員
「当たり前の選挙がありがたいものだと、逆に考えさせられた。子どもが通った時に恥ずかしくて申し訳なくて涙が出そうになった」

乙武候補を応援した、この人は…。

東京都 小池百合子知事
「こんなに身の危険を感じながら選挙をするのか。ここ日本ですよね。非常に疑問というか、おかしいと思います」

有権者が候補者の演説を聞くことすらできなくなっていました。

演説を聞きにきた人
「SNSとかで実際にトラブルが多々起こっていると聞いたが。個人的に許せない」


■公選挙法改正も視野に議論へ

民主主義の根幹である選挙制度を揺るがしかねない事態です。

岸田文雄総理大臣
「選挙運動の在り方に関わる問題なので、選挙制度の根幹に関わる事柄として、各党・各会派で議論するべき課題」

日本維新の会は、公職選挙法改正案の概要をまとめています。選挙の自由妨害罪を適用しやすくするため、具体的な妨害行為を明記する内容です。夏には東京都知事選を控えていることもあり、今国会での成立を各党に呼び掛けています。


■異例の家宅捜索 立件視野に捜査

今回家宅捜索が入った、政治団体『つばさの党』ですが、拡声器を大音量で使い、他の候補者の演説を妨害、そして、長時間にわたり他の陣営の選挙カーを追尾したことが、他の陣営の選挙活動を妨害したとして、公職選挙法違反の疑いが持たれています。

捜査関係者によると、複数の陣営から被害相談を受けていること、すでに一部の被害届を受理していることなどから、警視庁は、立件を視野に妨害の経緯を調べる方針だということです。

その一方で『つばさの党』の黒川敦彦代表は13日、「表現の自由の中で適法にやっている」として、今後も同様の活動を続ける意向を示しています。

国会でも動きが出ています。

自民党・茂木幹事長は「“罰則強化”など実効性のある対応を検討していく」と述べ、法改正に向けた議論を進める考えを示しました。

公明党・山口代表は「いきなり法改正ではなく、まずは現行法をしっかり議論していく」と述べました。

日本維新の会は、具体的な妨害行為を明記する改正案を取りまとめています。

立憲民主党・泉代表は「法制化の作業を進めている。現行法でできることを見定め、他党とやり取りしたい」としています。


■法改正議論も…“妨害”防げる?

どうしたら妨害行為は防げるのでしょうか。公職選挙法に詳しい、日本大学法学部の安野修右専任講師に聞きました。

安野修右専任講師
「今回の件で判決が確定すれば“どこまでやれば犯罪になるか”という前例ができる。例え選挙中でも、今後同様の事例については、警察が“警告”を出すだけではなく、さらに強い措置を取ることが可能になるかもしれない。ただ、そもそも公職選挙法は、今回のように他の候補者を組織的・継続的に妨害する事例を想定していない。対症療法的に法改正しても、実際に今後の選挙で“妨害行為”全てを防げるかは疑問」

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