スタッフやボランティアが袋詰めして用意した寄付食品を受け取る親子=いずれも東京都大田区で

 半数近くが「貧困状態」にあるとされるひとり親家庭。コロナ禍の影響や物価高騰が苦しい家計に追い打ちをかけており、周囲の日常的なサポートが欠かせない。食料支援事業に取り組む団体の関係者は、活動への一層の協力を呼びかけている。(有賀博幸)  「思いがけずシングルマザーとなり、親も近居でないため、不安でどうにかなりそうでした。そんな時、グッドごはんを知って利用させていただき、率直にありがたいのと、心強いのと、頑張ろうという気持ちになれました」

利用者から届いたメッセージカード。感謝の言葉がぎっしりと記されている

 個人や企業から寄付を募り、ひとり親家庭に食品を配る事業「グッドごはん」を展開する認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(GNJP、東京)。事務所に届く利用者からのメッセージカードには、感謝の言葉がぎっしり書き込まれている。中には、母子3人が山盛りのご飯を手に笑顔でテーブルに並ぶ、ほほえましい子どもの絵も。  配布対象は、行政が発行する「ひとり親家庭等医療費受給者証」を持つ世帯。利用者は登録後、毎月初旬にホームページのフォームから希望の日時と場所を申し込む。食品の内容は選べないが、月1回、レトルトやインスタント食品、お米、缶詰、菓子など買い物かご一つ分の食品を受け取れ、時に生鮮品が含まれることもある。  広報担当の飯島史絵(ふみえ)さんは「おなかが満たされることで気持ちが前向きになり、親子の会話が増えた、勉強に集中できるといった声が寄せられる。『いつか支援する側になれれば』と記す人もいる」と派生効果を挙げる。  エリアは現在、首都圏と関西圏、九州北部で、首都圏には東京都と神奈川県に三十数カ所の配布所がある。4月下旬に訪ねた都内の大田区にある配布所では、親子連れらが次々と訪れ、レトルトのカレーや肉じゃが、ビスケット、紅茶パックなど10種類ほどの袋詰めと、米2キロ、シリアル、鍋用スープなどを受け取った。開場した4時間で、161世帯に支援が届いた。  ひとり親歴12年で、昨夏から利用しているコンビニ店員の女性(33)は「中学生の娘が運動部に入っており、食べ盛りなのでとても助かる。もっと早く知ればよかった」。2歳の男の子を連れて訪れた契約社員の女性(28)は「食費が浮いた分、この子とのお出かけに使える。もう少し大きくなったら、助けてもらったことを伝えたい」と話した。  GNJPによると、今年2月の利用者調査で、コロナ禍の影響で「収入が不安定になった」「給料が下がった」「失業した」との回答が計46・3%。物価上昇によって家計は、60・1%が「非常に苦しくなった」、34・6%が「やや苦しくなった」と答え、一層の困窮状況が浮かび上がる。  2017年に事業を始めたが、コロナ禍から利用者が急増。23年は3圏域で延べ2万6千世帯が受け取り、今年も月に3500世帯前後が利用する。名古屋市を中心に東海エリアも拠点候補に挙がるが、現状でも利用世帯の増加に寄付、ボランティアとも追いつかない状態という。  GNJP顧問の野呂薫さんは「少子化の時代、不利な環境下で子どもを育ててくれているひとり親世帯を、皆で支えようという空気が広がれば」と、幅広い支援を求めている。寄付の詳細は法人のホームページ=「グッドネーバーズ・ジャパン」で検索=で。

<ひとり親世帯の年収と貧困率> 厚生労働省の2021年度全国ひとり親世帯等調査によると、母子世帯は119万5千世帯で、父子世帯14万9千世帯の8倍。母子世帯の平均年収は272万円で、父子世帯518万円の半分程度にとどまる。母親に非正規就労が多いのが主な要因。同省の22年の国民生活基礎調査によると、ひとり親世帯の貧困率は44.5%。経済協力開発機構(OECD)加盟国でデータがある36カ国中、下から5番目の32位となっている。




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