6月20日告示の東京都知事選で、野党側は一時は候補者選びに難航したものの、4月の衆院補選の勝利などを追い風に立憲民主党の蓮舫参院議員(56)の擁立にこぎ着けた。過去2回の選挙で強さを見せつけてきた小池百合子知事(71)に知名度では引けを取らないが、短い準備期間で「厳しい戦いに変わらない」との声も上がる。(三宅千智、大野暢子)

◆2月から候補者選定「一番出てほしかった人」

 「力強い決断をしてくれた」。27日午後、蓮舫氏の出馬会見後に都内で開かれた野党の知事選候補者選定委員会で、立民都連幹事長の手塚仁雄衆院議員がほっとした表情を見せた。  2020年の知事選で次点だった元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏(77)も「われわれが一番『出てほしい』と思った方の1人だ」と歓迎した。会合には蓮舫氏も顔を出し、「皆さまから本当に温かいエールをいただいた」と謝辞を述べた。

野党の候補者選定委員会で蓮舫氏(左から4人目)を囲みガッツポーズを取る委員=27日、東京都千代田区で

 立民、共産や市民団体の代表らが選定委をつくり、候補選びを始めたのは2月。当初から「女性候補」「政治や行政経験のある人」を軸とし、蓮舫氏を含め、都議や芸能人、首長経験者ら複数の名前が挙がっていた。

◆新人酒井氏の当選から流れが変わった

 野党側は過去2回の知事選で、16年にジャーナリストの鳥越俊太郎氏(84)を推薦、20年に宇都宮氏を支援して臨んだが、いずれも小池氏に大敗した。  「小池さんが相手じゃなかったら…」。選定委で名前が挙がった複数人に手塚氏が打診したものの、首を縦に振る人は現れなかった。擁立作業は、暗礁に乗り上げたかに見えた。  「流れが変わった」と関係者が口をそろえるのは、「知事選の前哨戦」と位置付けた4月の衆院東京15区補選。立民は新人酒井菜摘氏(37)を擁立し、共産は候補者を取り下げて支援に回った。その結果、小池氏の手厚い支援を受けた作家の乙武洋匡氏(48)ら他の候補者8人を大差で破った。

衆院東京15区補選で初当選を確実にし、支援者とグータッチを交わす酒井菜摘さん(右)=4月28日

 「大きく山を動かす千載一遇の局面だ」。手塚氏は5月1日の選定委で手応えをそう表現した。26日投開票の静岡県知事選で立民などが推薦した候補者が勝利したことも後押しとなり、最終的に蓮舫氏が名乗りを上げるに至った。

◆子育て世代から評価高い小池知事「蓮舫さんといえど…」

 蓮舫氏は旧民主党政権時代の09年、「事業仕分け」で、世界一の性能を目指す国産スーパーコンピューターの開発費を巡り「2位じゃだめなんでしょうか」と官僚に詰め寄る姿が話題になった。翌年の参院選東京選挙区では、過去最多の171万票を獲得した。  知名度の高い蓮舫氏の出馬に、ある立民都議は「経験豊富で、勝ち目がある」と期待する。一方、別の立民都議は「小池知事は、18歳以下に月5000円を給付する『018サポート』などで子育て世代から評価も高い。蓮舫さんといえど厳しい戦いになる」とみる。 

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