非常時に自治体に対する国の指示権を拡大する改正地方自治法は19日の参院本会議で、自民、公明両党や日本維新の会などの賛成多数により可決、成立した。立憲民主党や共産党などは、十分な歯止めがないまま国が自治体に指示権を行使できる法体系とすることは「憲法が保障する地方自治を踏みにじる」などとして反対した。  これまで国の指示権は、災害対策基本法や感染症法など個別の法律に定めがある場合にのみ認められていた。改正法により、個別法の規定がなくても国が必要と判断し、閣議決定すれば指示権発動が可能となる。  衆院採決時の法案修正で、国の指示権行使が適切だったかを検証するため、国会への事後報告を義務付ける規定が入った。ただ、国会による事前や事後の承認という、より厳格な手続きは盛り込まれていない。  立憲民主党の小沢雅仁氏は19日の反対討論で「指示権発動の要件が極めて曖昧な上、自治体との事前協議、調整の義務も国会の関与もない」と指摘。「乱用が懸念され、自治体への国の不当な介入を誘発し、拡大解釈される恐れがある」と疑問を呈した。共産党の伊藤岳氏も「自治体を国に従属させ、地方自治を根本から破壊する」と批判した。  指示権拡大を巡っては、首相の諮問機関である地方制度調査会が昨年末、法制化を答申した。答申は、横浜港に停泊した大型客船での新型コロナ集団感染や各地の病床逼迫(ひっぱく)などで国と自治体間の調整が難航したのは、関係法が対応していなかったためだと結論付けていた。(山口哲人) 

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