過去最多の56人が出馬した東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)には、異色の経歴の候補者もいる。人工知能(AI)エンジニアの安野貴博氏(33)は、「デジタル民主主義」の実現を掲げる。ネットをフルに使った選挙運動を展開すると思いきや、告示の日、街頭でマイクを握った。(松島京太) 「渋谷の皆さま。東京の明るい未来が見えますか」。安野氏は20日午前11時ごろ、JR渋谷駅宮益坂口で「未来」をキーワードに第一声の演説に挑んだ。

街頭演説をする安野貴博氏=6月20日午前、東京都渋谷区で

応援に駆けつけたのは20~30代の学生時代の友人や起業時の仲間たち。「はい、チーズ」。陣営関係者で記念撮影し、和気あいあいとした雰囲気で選挙戦がスタートした。 AIエンジニア、起業家、そしてSF作家。「未来を描く3つの職業を経験してきた」として、都知事の仕事に生かせる「実績」をアピールした。 現職の小池百合子都知事(71)と蓮舫前参院議員(56)が主な軸となると想定される「非常に厳しい」選挙戦。その様相を「政局の話に終始し、具体的な政策の話もその先の未来の話も全くしていない」と批判した。 テクノロジーを活用して民意を政治に反映させる「デジタル民主主義」の第一人者、台湾のオードリー・タン元デジタル相と連絡を取り合い、評価されたという政策に自信を込め、「テクノロジーで誰も取り残さない東京をつくる」と訴えた。 午後3時過ぎにはJR原宿駅東口に現れ、有権者からの「AIで何が変わるのか」などの質問に丁寧に応じた。なぜ街頭に立つのか。以前、記者の取材に答えていた。「ネットだけだと届かない人たちもいるので」 演説を聴いた世田谷区の男性経営者(40)は「若い世代で未来を作っていくという姿勢が良い。エビデンスやデータに基づいてビジネスをやってきた人に政治を引っ張ってほしい」と語った。

陣営スタッフと会議をする安野貴博氏(右から2人目)=6月20日夜、東京都中央区のオフィスで

午後10時50分ごろからは、翌日からリリースする有権者による政策提言システムなどについて陣営メンバーと会議。初日の予想以上の街頭での手応えに、興奮気味に振り返った。「これは結構やばいっすよ」 

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