史上最多の9人が立候補した自民党総裁選は、派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件を受け、政治とカネの問題への対応に注目が集まる。各候補は「政治資金改革の徹底は当然」と信頼回復に躍起だが、政治資金パーティーは大きな資金源だ。候補者の政治資金収支報告書を調べると、パーティーに依存する資金集めの実態が浮かんだ。(西川正志、小沢慧一)   9人それぞれが代表を務める資金管理団体と政党支部の2018~22年の5年分の報告書を集計した。  パーティー収入が最も多かったのは林芳正官房長官。5年間で46回開催し、総収入は3億8615万円。経費を除く利益は3億1348万円で、利益率は81.2%だった。東京や地元の山口県だけでなく、東北や九州でも開催していた。  茂木敏充幹事長が3億8553万円、小泉進次郎元環境相が3億3537万円と続いた。上川陽子外相以外の8人は1億円以上の収入があり、利益率90%超のパーティーも複数あった。  回数別でみると、最多は小泉氏で55回。22年は3月以降、8月を除き毎月1~2回の頻度で開いていた。  小泉氏の21年の報告書には「その他事業」として「オンライン研修会」が計上され、収入は4回で計1528万円。事務所によると、会費は1万~2万円で、講師を招き60分ほど講演してもらったという。事実上のパーティーともいえるが、総務省は政治資金規正法上、「オンラインを使ったものは政治資金パーティーではない」としている。  林氏は出馬会見で「パーティー収入への依存度を減少させたい」と述べたが、候補者たちはどれぐらい依存しているのか。  団体間の寄付を除く総収入に占めるパーティー収入の割合は、小泉氏が60.2%でトップ。林氏、加藤勝信元官房長官は50%を超え、2番目に低い河野太郎デジタル相でも35.2%だった。裏金の温床になったパーティーが収入の柱ともいえ、依存度の高さがうかがえる。

◆専門家「禁止された企業献金の受け皿に」

 政治資金に詳しい神戸学院大の上脇博之教授は「禁止されている企業献金の受け皿となっている」と指摘。裏金事件を受けて開催を控える政治家も出てくると予想しつつ、「大きな収入源であり、ほとぼりが冷めれば、開催するだろう。政治家の倫理観に委ねれば、また裏金づくりは行われる。パーティーそのものを禁止するような法改正が必要だ」と話した。   ◇    ◇    ◇

◆開催自粛を求める大臣規範、形だけに

 候補者9人のうち7人が、18〜22年の閣僚在任中に政治資金規正法で「特定パーティー」とされる収入1000万円以上の政治資金パーティーを開催していた。大規模パーティーの自粛を求める大臣規範があるが、形骸化が鮮明となった。  収支報告書によると、茂木氏は経済再生担当、外相在任中に11回の特定パーティーを開き、計2億4917万円を得た。外相などを歴任した河野氏は4回で計1億5061万円。閣僚在任中にパーティーを開催しなかったのは上川氏のみだった。石破茂元幹事長はこの期間、閣僚をしていない。  01年に閣議決定された大臣規範では「国民の疑惑を招きかねないような大規模なものの開催は自粛する」と明記されている。大規模の基準は示されていないが、法律で開催場所やパーティー券購入者数の報告が義務付けられている「特定パーティー」に沿い、「収入1000万円以上」が目安とされる。  神戸学院大の上脇博之教授は「自民党政権のもとで作った大臣規範というルールを自ら破っており、国民の信頼を得ようという意識がない」と指摘した。(西川正志)

◆閣僚在任中に開催した各氏の見解は?

 大規模パーティーの自粛を求める大臣規範について、閣僚在任中に特定パーティーを開催していた自民党総裁選候補7人の事務所に見解を聞いたところ、6人から回答があった。

自民党総裁選の公開討論会で質問順のくじを引く各候補=16日、金沢市で

 高市早苗経済安全保障担当相の事務所は、3987万円の収入があった2022年8月24日の特定パーティーについて、入閣前の同年7月にチケット販売を終えており「8月10日の内閣改造で急に入閣することになった。人事の時期が急に決まったことなどから中止は困難と判断した」と説明。「過去、閣僚在任中に特定パーティーは開催していなかった」としつつ、今回は入閣前から予定していたとして「大臣規範に抵触しない」との認識を示した。  他に回答があった小林鷹之前経済安保相、林氏、小泉氏、河野氏、茂木氏も「従来続けてきた勉強会などであり、疑惑を招くものではない」「政治資金規正法にのっとり適切に開催している」などといずれも大臣規範に抵触しないという認識だった。  加藤氏からの回答はなかった。

 政治資金パーティー 政治家や政治団体が活動資金を得るために開くイベント。政治資金規正法は収入から経費を差し引いた残額を政治活動に充てることを認めている。1回で20万円を超す支払いを同一の個人や法人などから受けた場合、政治資金収支報告書に支払った側の名前や住所が記載される。



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