航空自衛隊は23日、対領空侵犯措置では初めて、強い光と熱を放つ「フレア」の使用に踏み切った。ロシア軍哨戒機が北海道礼文島沖でおよそ3時間の間に3度、日本の領空を侵犯した。重ねての退去要求でも侵入をやめなかったため、より強い警告を示す必要があると判断した。
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フレアはミサイル攻撃を避ける「おとり」などに使われる熱源弾。防衛省は今回の使用は武力行使には当たらないと説明している。
自衛隊法84条は外国機による領空侵犯の際、「着陸させ、またはわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる」と定める。
領空への侵入や接近の恐れがある外国機に対しては、①緊急発進(スクランブル)②無線による警告③フレアや信号弾を用いた警告――と段階を分けて対応している。
自衛隊機などへの攻撃があれば自衛措置を講じる。今回、ロシア側の対応次第では事態のエスカレートにつながる可能性もあった。
礼文島には陸上自衛隊の分屯地がある。自衛隊は中国の軍備増強と台湾有事に備えて南西シフトを進めているが、礼文島はなお北方防衛の最前線として重要な場所といえる。航空自衛隊が公開したロシア軍哨戒機の写真で、ミサイルなどを収納する爆弾倉が開いていることも確認できた。
自民党総裁選や立憲民主党の代表選では安全保障政策も議論になっている。中国の軍拡やロシアによるウクライナ侵略への言及も目立つ。8月26日には中国軍機が初めて日本の領空を侵犯する事案も起きた。
9月22〜23日にかけては中国、ロシアの艦艇が礼文島近くの宗谷海峡を通過したのも確認された。自民党総裁選など日本の政権移行の間隙を突き、反応を瀬踏みした可能性がある。
小泉悠・東大先端科学技術研究センター准教授は「中国軍とロシア軍の船の共同航行と関係があるだろう。哨戒機の飛行形式を見ると対潜水艦戦の訓練中だったのではないか」と指摘した。
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