世界最高クラスの計算能力を持つ理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」は、2021年に本格的に運用が開始されて以降、線状降水帯などの気象予測や新型コロナウイルスの飛まつ分散のシミュレーションなどに役立てられています。
近年アメリカで「富岳」の2倍以上の計算能力を持つスーパーコンピューターが開発されるなど世界で競争が激しくなる中、文部科学省の検討委員会は「富岳」の後継として開発を進める新たなスーパーコンピューターについて5日、方針をまとめました。
この中では性能について、
▽現在の「富岳」に比べ、計算能力を5倍から10倍に高めるほか、
▽急速に活用が広がる生成AIなどにも対応できるよう世界最高水準のAI性能も実現することなどを目標に掲げています。
また、計算速度のみを追求するのではなく、AIの学習に最適とされる処理装置「GPU」などの導入を検討し、生成AIやAIとシミュレーションを組み合わせた予測などにも活用したいとしています。
開発主体は「富岳」と同様に理化学研究所に決定し、運用の開始時期については、遅くとも2030年ごろを目指すとしています。
スーパーコンピューター 世界で開発競争激化
文部科学省によりますと、スーパーコンピューターをめぐっては、「富岳」を超える計算能力を持つスーパーコンピューターが相次いで開発されるなど、世界で開発競争が激化しています。
アメリカは、「富岳」の2倍以上で1秒間に100京回以上計算できる能力、「エクサ級」のスーパーコンピューターをすでに2機完成させているほか、ことし中にさらにもう1機、運用を開始する予定です。
またEU=ヨーロッパ連合は、世界トップレベルのスーパーコンピューターを開発しようと大型プロジェクトを立ち上げ、2027年までの7年間でおよそ70億ユーロ、日本円で1兆2000億円近くの予算を確保していて、今後、「エクサ級」のスーパーコンピューターを2機整備する計画です。
さらに中国も、詳しい情報は明らかにされていませんが、「エクサ級」のスーパーコンピューターを少なくとも2機、開発を進めていると言われています。
また、世界のスーパーコンピューターでは、生成AIにも対応できるようコンピューターの頭脳と言われている「CPU」に加えて、AIの学習に最適とされている処理装置「GPU」の導入が主流となっていますが、日本のスーパーコンピューター「富岳」には搭載されていません。
世界で「富岳」を超える計算能力を持つスーパーコンピューターの開発が次々に計画されていて、日本も新たなスーパーコンピューターの開発が不可欠となっています。
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