知床世界自然遺産の知床岬で計画されている携帯電話基地局の整備事業について、日本自然保護協会と北海道自然保護協会は12日付で、「自然遺産の顕著な普遍的価値(OUV)に影響を及ぼす可能性がある」とする緊急通知書を国際自然保護連合(IUCN)を通じてユネスコ世界遺産センター(世界遺産条約事務局)にメールで送った。

 「世界遺産条約履行のための作業指針」では、OUVに影響する可能性のある大規模な復元または新規工事を実施もしくは許可する場合は、世界遺産委員会に報告するよう求めている。

 環境省はこれには該当しないとしているが、自然保護団体は特に知床岬での基地局建設はOUVへの影響が強く懸念され、報告が必要な新規工事に該当するとし、世界遺産センターに通知した。

 日本自然保護協会によると、IUCNから14日に通知書を受け取り、世界遺産センターに転送したとの連絡があった。世界遺産センターは今後、国と協議して実態を確認し、課題を解決していくことになる。

 知床半島では4基地局が計画され、知床岬はそのひとつ。世界自然遺産A地区(将来にわたり厳正な保全管理を図る地域)で、国立公園の特別保護地区にもなっている。自然保護団体は環境省に対し、オジロワシを含む希少野生生物に対する調査を計画段階で事業者に指示せず、環境影響評価が行われないまま許可したことは大きな問題と批判している。

 日本自然保護協会は「今回の計画が認められれば今後の保護地域制度の運用をゆがめる最悪のケースとなる。これをきっかけに環境省は世界遺産センターなどと協議を進め、計画の再検討に向けて地元自治体と調整していくことを期待している」としている。(奈良山雅俊)

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