印刷大手などが、文化財の外観や構造をデジタルデータ化する事業に力を入れている。撮影技術や画像処理ノウハウを駆使し、絵画だけでなく立体的な仏像、陶磁器なども画面上に忠実に再現。仮想現実(VR)で楽しむこともできる。文化財の新たな鑑賞方法として、美術館や博物館などで導入の動きが広がっている。

TOPPANホールディングス傘下のTOPPAN(東京)は3日、本社ビルに文化財の3次元CGを鑑賞できる施設「デジタル文化財ミュージアム KOISHIKAWA XROSS(コイシカワ クロス)」を開いた。高さ5メートル、幅20メートルの大型ディスプレー上で、金峯山寺(奈良県吉野町)の本尊「金剛蔵王大権現立像」を奥行きのあるVR映像で再現。江戸城のしゃちほこなどの画像を回転、拡大して観察できるコーナーもある。

同社は1997年からデジタル文化財事業を手掛け、これまで60以上のVR作品を制作。新施設を開いたのは技術のPRが狙いで、斉藤昌典社長は「普段見られない(文化財の)裏側が見られるなど、新しい体験価値が生まれる」と話す。

一方、大日本印刷は文化財の3次元CGと解説文を画面に表示する鑑賞システム「みどころビューア」を開発した。タッチ操作で文化財の画像を自由に動かし、関連知識を得られる。同社はこれまで秋田県の伊勢堂岱(たい)遺跡の出土品やフランス国立図書館所蔵の美術品をデジタル化。広報担当者は「文化財の実物は安全に保存しながら、新しい形で人々に提供できる」と説明する。

カメラ大手のキヤノンは、絵画などの画像データを和紙にプリントして寄贈する活動に取り組む。隅々まで細かく分割撮影し、独自の色補正技術で実物の質感を再現。2021年には国宝「風神雷神図屏風(びょうぶ)」の複製を京都市の建仁寺へ奉納した。

「KOISHIKAWA XROSS」内のVRシアターに投影される「金剛蔵王大権現立像」=3日、東京都文京区

大日本印刷が開発した、文化財を3次元CGで鑑賞できる「みどころビューア」(同社提供)

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