オープンAIは連邦政府による規制が好ましいとして、カリフォルニア州のAI規制案に反対を表明した

【シリコンバレー=山田遼太郎】米新興企業オープンAIは21日、米西部カリフォルニア州議会が審議中の人工知能(AI)規制法案に反対の立場を表明した。AIは米国の産業競争力や安全保障にも関わると指摘し、連邦政府による規制が妥当だと主張した。

法案は強力なAIの開発企業に安全対策や州当局への報告義務を課す内容だ。企業にとって規制順守の負担が重く、技術革新を妨げるとしてAI分野の企業や投資家が反対の声を上げている。

同州にはオープンAIや米グーグル、米アンソロピックなどAIの主要企業が本社を置く。

オープンAIは同日、法案を提出したスコット・ウィーナー州上院議員に宛てた書簡で反対を表明した。法案が成立すれば「成長を脅かし、技術革新を遅らせ、世界最高峰のエンジニアや起業家がよりよい機会を求めて州を去ることにつながる」と警告した。

「連邦政府による明確なAI規制の枠組みが、米国が中国などに競争優位を保つのに役立つ」とも述べた。

同社はバイデン米大統領が2023年10月に発した大統領令に賛同している。大統領令はAIモデルの公開前に企業が米政府から安全性の評価を受けるよう義務付け、企業に自主的な安全対策も求める。

オープンAIは高度なAI技術の安全確保をめざす州法案の狙いについては評価した。一方で各州は包括的な規制の策定を連邦政府に任せ、AIの活用による人材採用時の差別や偽情報の拡散といった個別の問題に的を絞ったAI政策に取り組むべきだとの認識を示した。

同社のサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は米議会などで、高度なAI開発について政府の規制を歓迎する立場を示してきた経緯がある。

ウィーナー州上院議員は同日、オープンAIは法案が義務付ける安全対策の内容に反対していないと主張した。「連邦議会がこの問題を扱うのが理想だと同意する」と述べつつ、連邦議会でAI規制法が成立するかは疑わしいため、州による規制の必要性を強調した。

法案は5月に州上院を通過した。近く下院でも採決される見通しだ。成立にはニューサム州知事の署名も必要となる。AI企業などの反対を受け、同州選出のペロシ元下院議長も反対を表明した。賛成派と反対派の攻防が激しくなっている。

法案は強力なAIモデルによって多数の死傷者や金銭的な損失といった重大な危害が生じないよう、州内で事業活動をするAI開発企業に義務付ける。違反企業には罰金を科す。開発費に1億ドル以上を投じるなどした一部の強力なAIが規制対象だ。

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