房総半島沖の深海に年間推定2万8000トンものマイクロプラスチック(MP)が沈んでいるとの観測結果を、海洋研究開発機構の研究チームが明らかにした。房総半島沖は日本近海に流れ込んだプラごみがたどり着く終着地点の一つとされる。太平洋の深海に降り積もるMPの重量が観測によって明らかになるのは初めて。
MPは直径5ミリ以下の微小なプラ粒子。プラ製品の使用中に劣化などで発生したり、川や海に流れ込んだプラごみが紫外線や波の作用で小さく砕かれてできたりする。MP自体はとても軽いが、プランクトンの死骸などに付着して深海へ沈んでいく。
研究チームは、黒潮が房総半島から東へ離れる一帯に広がる「黒潮続流再循環域」という海域の水深4900メートルにMPの捕捉装置を設置。2014年7月~16年10月、装置内に降り積もったMPを回収し、時系列で詳しく分析した。この海域は日本近海のMPが流れ着く「ホットスポット」の一つとされる。
その結果、1平方メートル当たりに1日平均352個のMPが降り積もっていた。全体の90%を0・1ミリ以下の小さな粒子が占め、ポリエチレンやポリアミドなど17種類の異なる材質が見つかったという。
集まったMPの重量は1平方メートル当たり年間20ミリグラムだった。これを海域(約140万平方キロ)全体に当てはめると年間2万8000トンに相当すると推計された。
世界のプラ生産量は1950年の200万トンから15年には3億8100万トンに増えている。深海に沈むMPの量が生産量の増加に比例して増えると仮定して計算すると、この海域には50年代以降、56万7000トンのMPが沈み、深海底に蓄積していると考えられるという。
チームの池上隆仁・同機構副主任研究員は「人為起源のMPがこれほど大量に深海に沈降しているとは驚きだ。まさにちりも積もれば山となる。MPが海洋で移動する仕組みを明らかにすることで、海洋プラごみの抑制と生態系保全につなげたい」と話している。
研究成果は25日付の米学術誌「エンバイロメンタル・サイエンス・アンド・テクノロジー」(https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.est.4c02212)に掲載された。【阿部周一】
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